「しかし、昨日の人は本当にすごかったなぁ…」
あの人私の孫だって言ってたな…私より歳上だったけど。でもパッと消えてたしなんというSF。信じるけど…でも内容がなぁ…。
「本当にあの人達の誰かと結婚するのかな…すっごい嫌だな…」
何でいじめられてる奴と結婚するんだよ。未来の私どうなってんの?あ、病んでるのか。このまま行くとはなのじょしこうせーになったら私は…食われる…。食われるってどういう意味だろう。体の一部が無くなっちゃって病むってこと?そりゃ病むよな…。自分で自分の未来を想像して体がぶるりと震えた。と、とにかくお話ししてみよう。話してみると意外と好意的な人もいるのかもだし…。
「おい」
「誰がいいかなぁ。いや誰も嫌なんだけど…でも未来の私と子供達のためにはやるしかない…はぁ、すげぇやだけど…」
「おい」
「でもあの人だけは嫌だなぁ。恐いし…恐いし…恐いし。あれ、恐いしか出てこないや」
「お い」
「うぎゃんっ!!」
突然ランドセルを引っ張られて私の体は横に吹っ飛んだ。い、痛い!膝すりむけた!!ギッと留兄ちゃん直伝の睨みで相手を見て私は青ざめた。
「さ、さささささぶ三郎君…!!い、痛いよ!!」
「うるさいな、お前が私の事を無視するからだ」
ふんっと腕を組んで見下ろしてくる三郎君にガタガタと震える。私の嫌いな人堂々の1位だ。こいつはダメだ。こいつだけは無理だ。こいつと結婚するくらいなら食われて病んだ方がマシだ!!!
「こいつとか言ってんなよ」
「ギャー!心の声が読まれた!?」
「口に出してるんだよ、あほあき」
急いで口を押さえるも、言ってしまった後ではもう遅い。
「結婚ってなに?」
「えっ!?い、いやぁ、何だろうねあはははは!」
「笑ってごまかそうとしてるんじゃない」
「すいませんでした。ちょっとお嫁さんに憧れただけです」
感情のまったく込もってない冷たい視線に頭を深々と下げた。もう恐いやだ。何で毎朝三郎君と会うんだろう…お陰でいつも一緒に登校している。学校に着くまでの時間が唯一の心休まる時だったのにそれも無くなっちゃったよ。
「ふーん…お嫁さんになりたいのか」
「う、うん。そうなんだよね。三郎君はさぁ…すっごく働いてくれる旦那さんになりそうだね!」
「そうか?」
うん。そして、家庭には寝に帰るだけで全然幸せにはしてくれそうにないよ…。なんて言えないのでうんうん頷いていると、少しだけ顔が赤くなった三郎君。ん…?
「まぁあきは鈍くさいから仕事も出来そうに無いしな。私ががんばって働いて稼ぐしかないな」
「うん…?」
「働きに出る心配がいらない位には稼いでやるから安心しろ。お前は家の事をしっかりやるんだよ」
「う、うん…でも、私三郎君とは結婚する気ないから、そういう家庭的な子がいるといいね!」
「あ?」
「うぴっ…!」
ど、どうしてだろう。さっきまで珍しく優しそうな顔をしていたのに…突然ひょうへんしてしまった!!私はただ三郎君に素敵なお嫁さんが出来ることを願っただけなのに!!!
「ふーん、お前この私を拒否するのか。私に不満があるのか?」
「ななな、ないない!!ないよ!三郎君みたいな完璧な人に不満なんかあるわけないじゃん!むしろこっちが見合わなすぎて遠慮してしまうって言うかね!?」
「それは一理あるな」
「で、でしょー!!!」
よ、よかった…何とか三郎君の機嫌が良くなって…この五年間機嫌を取り続けてきた私の腕をなめんなよ。言ってて悲しいわチクショー!!
「じゃああき、お前が私水準までレベルを上げろよ」
「うんうん!頑張るね!!」
絶対に三郎君との未来はないけどな!!
「私もちゃんと手伝ってやるから安心しろ」
「えっ!?」
「まずは体力をつけろよへなちょこ。これから毎日学校まで私の鞄を持たせてやろう」
「えっ!!??やだよパシッてるだけじゃん!!!!」
「…あ?」
「な、なーんてね!!三郎君につりあう女の子になるぞぉー!!」
やっぱり今日も恐すぎて逆らえなかった。
三郎君だけは運命の人じゃありませんように…!!
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