「ふっ、う、っひ、く!ハチ君!の!あほんだら!っひ!」


教室を飛び出して来たものの、ランドセルも体操服も教室に置いたままだし帰れない…。今戻るとハチ君とでくわすし少し時間を潰さないといけない。何で私がハチ君に気を使って行動しなきゃなんないんだ。また怒りがよみがえる。くそお!


「ハチ君が青ざめるほど嫌がらせしてやりたい…私って本当に性格悪いな……ん?」


校庭のはしっこを歩いて時間を潰しているとずっと先に小さくて白いものがぴょこぴょこと動いた。距離が遠くてよく見えないけど気になって小走りで近付いていくとその正体がわかった。


「あ、あれは!飼育小屋で飼ってるうさぎのピーちゃん!?」


間違いない。あの耳が少しギザギザなうさぎはハチ君が可愛がっているピーちゃんだ。ちなみに他にもうさぎはたくさんいるけど見分けがつかない。


「ど、どうしよう…逃げ出しちゃったんだ。ハ、ハチ君にほうこく…」


慌ててハチ君の所へ行こうと思ったけど足が止まった。そうだ、今喧嘩してるんだった…。だけどこのまま放っとく訳にもいかないし、誰かが捜している様子もないし…ピーちゃん、すごい気性が荒いんだよなあ…いっつもハチ君がだっこすると暴れてもがきまくってハチ君傷だらけだしすぐ噛みつこうとするし…こ、こわい…。ジリジリと背後から近寄っていくと草をもぐもぐしていたピーちゃんがピクリと頭を上げてこっちを見た。


「や、やあピーちゃん。お散歩なのかなー?楽しそうだねー。私も一緒にいこうかなあー」

「………」

「あっ!」


しばらく沈黙が続いてじっと私を見ていたピーちゃんはダッと跳び跳ねて逃げてしまった。あああ!何なんだハチ君もピーちゃんも私を無視して!!


「…って、あっ!ピーちゃんそっちはダメだよ!!」


ピーちゃんが逃げていった先には、深い溝があってとても危険だ。私みたいな子供が落ちたって登ってこれないぐらい深い。そんな所にもし落ちちゃったら…慌ててピーちゃんを追いかける。


「ピーちゃん!待って!待てコラ!!」


追えば追うほどぴゅんぴゅん逃げる。何でだ!あ、追ってるからか?追われると逃げたくなる気持ちはとてもよくわかるよ…だけどもう追うのをやめたって意味がない。ピーちゃんの体が宙に浮いた。だめだ、あんなちっちゃいのが落ちたら、死んじゃうよ!!


「あぶないっ!!」




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