珍しく缶鬼で鬼に仕立てられず、しかも三郎君が鬼だと言うので顔を真っ青して隠れる場所を探していた。
ど、どうしよう。もう百数え終わっちゃうよ!!三郎君が鬼なんて役じゃねぇよ本物だよ!三郎君始まる前に「一番に捕まった奴は一週間どれい」って罰ゲーム付けてたけどあれどう見ても私狙ってるよね!!ていうか私見ながら言ってたからね!全く目を反らされなくて体がてっぺんからつま先まで震えた。と…とにかくどこかに隠れないと!
「あっ」
「お。おいでおいで」
ちょうどいい具合の土管があったから覗き込むと勘ちゃんが居た。くるっと背中を向けると手を掴まれて引っ張られた。
「なんでー!おいでって言ったのに」
「え、い、いいよ。そこ狭そうだし…」
「二人くらい入れるよー」
「ううん、大丈夫。私鈍くさいから勘ちゃん巻き込んで捕まりそうだしさ…!」
「だーいじょおぶ!俺が守ったげよー」
しつこい!!!!!
私は君と一緒に隠れるのがおそろしいんですよ!!!!!こう言い合ってる間も顔すごい近いし全力で後ろに倒れてるけど全く逃げられない。私が力抜いたらその勢いでおでこ衝突して第三の目開きそうだけど!?
「行くぞー」
「あ」
「ほらほら、早く」
結構近くから三郎君の声がして勘ちゃんに引かれるまま慌てて土管に滑り込んだ。すぐに逃げられるように忍者みたいに片膝立てて座っているとのびのびと座り込んだ勘ちゃんが首を傾げていた。うん、勘ちゃんからもすぐ逃げられるようにね。
「ねぇねぇ」
「……うん?」
「土管の中って、落ち着くよねぇ」
「…わかるー」
「でしょー!」
「あの、もうちょっと静かに…」
あんまり声を潜めないから口に指を持ってってしーすると勘ちゃんもしーってやってにひひと笑った。あ、忍ばないタイプだわ。何言っても自分の好きなようにする奴だなこれは…。口に当ててた手を引っ張られて体がぐらぐらと揺れた。あ、あぶなっ!何すんのこいつ!!
「あきさー、兵助に求婚されたんでしょ?」
「きゅーこん…」
「結婚してくれって言われただろー」
「あ、ああ…」
ぐにん、と痛くないくらいの力で頬っぺたを引っ張られる。きゅうこんってあの事か。でもあれは兵助君わたし越しにとうふを見てたからカウントする必要はないと思っている。
「どう思った?」
「うーん、嬉しいは嬉しかったかな…?」
「あき俺と結婚しようキリッ」
「ははは…遠慮します…」
「えー!?何そのリアクション薄っ!」
「ちょ、ちょっと!静かにむごっ」
「あき静かに」
突然口を手で押さえられた。いや、うるさかったのはそっちだからね!?でもそのまま耳をすますとこっちに近付いてくる足音が聞こえた。ま、マズイ…!!
音をたてないようにと気を付けようと思うとバランスの悪い座り方が祟ってこけそうになった。手は勘ちゃんの腕を掴んでるから間に合わない…!もうだめだ!
ぎゅっと目を瞑ると勘ちゃんにぐいっと引っ張られて私の体は土管の中ではなく勘ちゃんの上に転がった。
「っ!?」
「しー」
驚いて飛び退こうとする体を勘ちゃんがぎゅっと手に力を入れた。そ、そうか。音をたてなかったからまだ三郎君にここがばれてないんだ!!ぐっと息を殺すと足音が一度止まった。
「おかしいな…ここらへんからあきの声が聞こえたのに…あいつを一番に見つけないと意味がない」
それからまた足音が聞こえてどんどん遠ざかって行った。た、た、助かったー!!!ていうかやっぱり三郎君わたしをどれいにする気満々だね!!恐ろしいよ!!遊びをうたったいじめ本当にやめていただきたいよ!しばらくすると勘ちゃんが腕の力を緩めたのでそのまま顔を上げた。
「えへー、ありがと!助かったね!」
「うんうん。でもまだその辺うろついてるかもしれないからもうちょっとこのままでいようね」
「そっか…わかった!」
でも重くないのかなー、と何となく土管の外を見て固まった。どこかへ行ったと思われた三郎君がじっとこっちを見ていたからだ。心臓が3秒くらい止まったと思う。
「さ、さささっささ三郎君…!!」
「あれっ、もう来ちゃった」
「見つかってるのわかってたくせによく言うよ」
「えっ!?」
驚いて勘ちゃんを見るとにたぁ、と笑われた。何だその笑顔!?それから土管から出るようにうながされて外に出ると後ろからドンッと押されて三郎君を道連れに倒れてしまった。お、おいーーー!!!!なんてこと!するの!!!
「あきごめーん!缶は蹴っとくから自力で逃げてね!俺三郎の罰ゲーム死んでも嫌だからー!」
「ちょ、ちょ、ちょっとおおおおぉぉおおお!!??!?」
一人すたこらっと逃げてった勘ちゃんに思わず手を伸ばしたまま固まった。う、裏切られた…見捨てられた…。だが悲しんでる暇はない。下から声を掛けられて私は三郎君を見た。顔が赤くなってる。赤くなるほど怒っているのか…。
み、見える…三郎君の後ろに阿修羅が見える…。
「お前、絶対捕まえてどれいにしてやる…」
「ぴっ…!と、留にいちゃああぁぁあぁあぁあああんんんんん!!!!!!」
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