「あ。あき」

「げ。兵助君…」


貴重な昼休憩を先生に捕まって掲示板の張り替えに使っていると兵助君が声を掛けてきた。手には何やら持っている。


「ハチ達どこ行った」

「さあ…グランドじゃないかな」

「そうか。休みに旅行いったからお土産渡したかったんだけど…」


ああ、こないだ連休だったからね。いいなー旅行。私は三日間ママのチャーハンだったというのに。おすしか。おすしを食べたのか。

しかし兵助君は本当女子に人気だよ。兵助君の背後を見ると教室の窓からたくさんの女の子達が顔を出していた。兵助君、女の子とあんまり喋んないんだよなぁ。何で私を構うかな…いじめられてても無視するくせにさ…。


「悪いけど今の伝えといてくれるか?また次の休憩に二組に行くよ」

「うん、わかった」

「あとさ、」

「うん」


突然視界に手が入ってきてそのままずいっと顔に持ってこられたと思ったら顎を掴まれた。ぐいっと顔を持ち上げられて上を向くとめっちゃ近い兵助君顔近い!!そんで顎が割れそうに痛い!そんで後ろで女子が叫んでるからね!!!


「やめてよ!痛いよ!!!」

「人と喋る時は目を見て話せよ。低学年でもわかるぞ」

「ごめんなさいでした!!」


よし、と手を離されて兵助君はそのまま背中を向けて帰っていった。兵助君と一対一は視線がぴくりとも反らされなくて恐いからずっと下を向いて話していた。何あれちょうこわい。今さら兵助君の目力にぷるぷると体が震えてきた。震えて画ビョウ取りを落として画ビョウぶちまけた。




次の休憩に予告通りやって来た兵助君はハチ君達にお土産を配っていた。ハチ君は嬉しそうに袋を開いてがっかりしていた。何だろうあの白くて四角いキーホルダー…。

女子達が遠目にそれを見てきゃっきゃはしゃぐ中で私はそっと視線をそらす。昼休憩の兵助君が恐すぎてもう喋りたくない…。出来れば兵助君の目に入らないように極力そんざいかんをなくしておこ「あき」はいすいません!

目の前に立った兵助君に慌てて立ち上がる。相変わらず目力強い。強すぎる。でもいつものように視線をそらすとお昼みたいに恐いので必死に兵助君の目を見つめ返した。あ、やばいこれ体が震え出した。涙も滲むし緊張で顔に血がしゅうけつしていそうだ。


「………」

「へ、すけくん」


「お、おい何だあれ…」


向こうでハチ君の声がする。おいテメー見てないで助けろ!!今すぐこのまつ毛ボーイを一組へそうかんしろ!!!兵助君を見つめたままギリイとハチ君に念を送っていると頭に軽い衝撃が。兵助君が私の頭を撫でていた。


「やれば出来るな。えらいえらい」

「えっ、えらい?えへへー」

「ごほうびにこれやる」

「わーいお土産!ありがとー!!」


褒められた事にへらっと笑っていると綺麗な袋に包まれた何かを手渡された。兵助君、普段なに考えてるか全然わかんないし会話が噛み合わなくてめんどくさいとか思っているけど褒めてくれたしお土産くれたし優しいな!うきうきと袋を開いて目が点になった。なにこの白くて四角いキーホルダー。


「手作り豆腐体験やって来たんだ。それマスコットのとうふ太郎」

「とうふたろう…」

「あ。あきは女の子だもんな。とうふ姫がいいか?」

「…兵助君、これ…」

「ん?」


慌てたようにポケットを探って家の鍵らしきものを取り出した兵助君を声で止めた。鍵の先に白くて四角いものに顔が描かれててリボンつけてるやつが付いている。あれがとうふ姫…。


「これ……かわいーねーーーー!!!!なにこのとうふ太郎!なんかぷるんぷるんしててカワイー!!ありがとー!私も家の鍵に付けるね!!」


今までにないキャラクター性!いいよ、いいよ君。私はかわいい女の子らしいのより断然こういうのが好きだよ!鍵穴にキーホルダーの輪っかを取り付けて兵助君の目の前でつるしてみせると何でかぽかんとしていた兵助君はじわじわと瞳を輝かせていった。わお、兵助君のこんな顔初めて見た!子供みたいだな…いや子供なんだけども。
と思っていたらがばっと抱き付かれてえ!?!!??


「ぎゃっ!!!」

「お、おいっへーすけ!!!」

「あき、俺の運命の人かもしれない。結婚してくれ」

「!?!▼≪☆▲⊆⊥ゐΣΨ%」


兵助君の行動に声にならない悲鳴を上げた。

あ、私ではない。三郎君がね。恐いよ…。
肩を掴んで私を輝く瞳で見つめる兵助君を見上げる。も、もしかして…兵助君が運命の人!?結婚してくれだって!ひゃーー!!!!嘘だろおいー!こんなまともに見てらんない人としろくじちゅー一緒に居られるわけないだろー!!!?で、でも可能性は無くはないよね。むしろ一歩近付いた。ドキドキしながら見上げていると誰かが兵助君の肩を叩いた。


「雷蔵」

「兵助…邪魔して悪いけど、休憩終わっちゃうよ」

「あ、戻るわ。ありがとう」

「あっ!ま、待って!」


時計を見てさっさと戻ろうとする兵助君を引き止めた。告白した割に何もなかったみたいに帰ろうとするから思わず止めちゃったよ…。不思議そうにこっちを見る兵助君。ど、どうしよう…あっそうだ!兵助君と今日遊ぼう!それでみきわめるんだ!


「あ、あの、今日さ、遊ぼうよ!」

「あきと二人でか?」

「う、うん!」

「ああ、い」

「兵助…八百屋の隣のとうふ屋さん明日は休みだぞ」

「それにとうふドーナツ売ってるパン屋も明日休みだな」

「そうだ、あと豆乳スイーツ始めましたってケーキ屋さんに看板出てたよ」

「悪い。今日は無理」

「…あ、うん……」



もういいよ。
兵助君、お前はとうふと結婚しろ。




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