「おい。ランドセル置いたら河原に来いよ」

「え?今日はママが夕飯のお買い物連れてってくれるって言ってたから…」

「20分待ってやる。遅刻したらもう二度と遊んでやらないぞ」

「わ、わかりました…」


今日も三郎君が遊んでくれるらしい。今日はお買い物行きたかったのに…くそっ。ママおもちゃ付きのお菓子言わなきゃ絶対買ってくれないのによー!!だけど逆らうと三郎君が恐いから思わず頷いてしまった…。三郎君との遊びは、自作のスケボーで坂道を転がり落とされたり近所の恐い犬にデコピンさせられたり幽霊やしきに一人で入って写真を撮らされたり…今までの遊びを振り返って、一度も楽しかった事がない。今日は何をするんだろうなぁ…。

河原に着くとキョロキョロと見回した。三郎君はどこだろう。20分はまだ経っていないはずだけど…。土手から河原を見下ろしていると背の高い草が生い茂った場所ががさがさと動いて…あっあれはハチ君!


「おーいハチくーーーんっ!!!」

「ん?あっあき!なにやってんだよー!」

「えっ?」

「もー皆来てるぜ!こっち来い!」


走って近付いていくとパシッと手を取られてそのまま草むらの中に入っていく。い、いたいっ!草で切れてるこれ!!!ハチ君はお構いなしにすいすい進んで行くから抗議しようにも出来ず、目に草が刺さらないようにぎゅっと瞑って着いていった。


「あっ先に言っとくけど…」

「…う?」

「…(何でコイツ目閉じてるんだ。か、かわっ…)」

「…?ハチ君、どうしたの」

「あっ!?いやいや何でもねぇよ!あき他の奴には言うなよ!やくそくだ!」

「うん、わかった」


他の人に秘密…ドキドキしながら頷くと、ハチ君は再び歩き出した。ガサガサ、カサカサ。しばらく草をかき分ける音だけが続いて、無くなった。それから聞こえてきたのは


「ぅにゃあー」


「わ、わぁ…!!!ねこちゃん!」

「しーっ大声出すな!」

「ご、ごめん…!か、かわいー…!」


目を開けると少し開けた場所に出て、そこで皆は居た。皆の中心には可愛い子猫が…五匹もいるう!!!しゃがみこんで子猫を覗けばくりくりの目がこっちを見上げてくる。か、かわゆいー!!!!


「わー、どうしたの?ネコちゃーん、かわいいにゃー?」

「お、おまっ…」

「…こいつら捨て猫なんだ」

「えっ」


兵助君の声に顔を上げるといつも無表情の兵助君が少しだけ悲しそうな顔をしていた。それから勘ちゃんが続ける。


「そうそう。前に帰り道で兵助と見つけちゃってさあ。それからここでこっそりお世話してたんだー」

「そうなんだぁ…ママが居ないの、さみしいね…」

「この場所は回りから見えないし猫達を隠しておくのによかったんだけど…ここ今度の休みに草刈りされちゃうみたいでさ」

「だからこいつらの貰い手そろそろ探そうと思って!頼むあき!協力してくれ!!」


雷蔵君が困った様に言って、ハチ君にパッと頭を下げられ皆の視線が私に集まった。協力はもちろんする!だけど…。


「うちのママ、動物アレルギーで動物飼えないんだぁ…」

「そっか…」

「ご、ごめんね…でも他に出来る事なら何でもするよっ!!」


しゅん、と落ち込んだハチ君の両手をぎゅっと握るとパッと顔を赤くして反らされた。んだよ本当にコイツ感じ悪いな…。


「痛っ!!」

「私達はもう猫をもらってくれるアテが無いんだ。一匹は兵助の家で飼うことになった。あと三匹は飼ってもいいと言ってくれてる所がある。残るのは一匹…」

「あ、そうなんだ」


バシッとなぜかハチ君の両手を握っていたのを叩き落とされて顔を向けると三郎君がずいっと寄ってきた。い、痛ぇな…でもそっか、あと一匹なんだ。じゃあ、えーっと………そうだ!!


「私にまかせて!飼ってくれそうな家知ってるから!!」

「本当か!?良かったな、兵助!」

「で、でもまだ決まってないからあんまり期待しないで…」

「あき、ありがとう」

「いや、だからもしかしたら駄目かもしれないし…」

「良かった!本当に良かった!あきお前いいやつなんだな!ありがとな!!」

「あ、う…ううん…」


あんまり喜んでるから強く否定できなかった。なんだよチクショウ、動物が関わるとハチ君は可愛いな…。


「もしこれで駄目だったら…ハチと兵助は怒るだろうなあ」


ぼそり、と後ろから呟かれて背筋が凍った。さ、さぶろうくん…!!笑ってんじゃねぇよ…!!!





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