「ん?」


お昼休みにお弁当を食べた後、友達と図書室で休んでいた。携帯を何となく見ると、メッセージを知らせる緑色のランプ。誰からだろうと開けば竹谷君からだった。


『今日の放課後、皆予定合わないって言うから中止にするな!』


本当に律儀だなぁ…後で教室に戻ってからでもよかっただろうに。あ、次体育で男女別だからかな?しかし本当に律儀だなぁ。
今日は準備ないのかぁ。だけど貼り付ける前の紙に色塗るだけだし、下書きもやってくれてるし…私どうせ何にも予定ないし、一人で進めておこうかなぁ。一枚分くらいなら出来そうだし…うん、そうしよ。


『私暇だし、色塗りだけだから一人でやって帰るよー(^o^)/』

『本当か?俺も委員会終わらせたらすぐ手伝うから!悪いな!』

『いえいえ。こっちこそ忙しいのにありがとう( ;∀;)竹谷君だいすき』




「あ…しまった…」


先日のから残っていた予測変換を間違えてタップしてしまった…。しかも消そうとして間違えて送信押してしまっ、た……あ、既読に、……ああああ…。





「ぶはっ」

「え?なになにどうしたの」

「わからん。突然噴き出したぞ」

「はち大丈夫?ほら、タオル使って」

「汚いな…近寄るなよ」

「おっ、俺は悪くねぇーーー!!!」






「ふぅ、ちょっと休憩しよ…」


色を塗るためにずっと下を向いてたから首が痛い。ゆっくりゆっくり顔を上に上げながらほぐすと、教室を見渡した。色塗り自体は簡単な作業で、どうせなら効率よくやろうと並べられるだけ画用紙を並べて同じ色の物から順番に塗っていた。今はまだ二色目の途中。…一人では枚数多かったかな…。出切れば全部塗り終えて帰りたいんだけど…。竹谷君が来てくれたら終わるかなぁ。

午後の授業は男女別の体育と選択授業だったから竹谷君とは話さなかった。まぁ席が隣だからHRの時何度かじっと見られたけど…。
今日は二人っきりか…竹谷君聞いてくるだろうな…何と言えばいいんだろう。


「わりーわりー!待たせたな」

「あ、竹谷君…お疲れ様。もういいの?」

「ああ、指示だけ出して頼んできたから大丈夫」


ガラッと勢いよく開いたドアに体が跳ねる。竹谷君、汗かいてる…走ってきてくれたのかな…。鞄を机の上に置くと、私の座る隣まで来てしゃがみこんだ。


「どんな感じだ?」

「今ね、効率よく塗ろうと思って同じ色ごとに塗ってるの。順番とかは無いんだけど…」

「そっか、じゃあ俺は他の色を塗るな」

「あ、竹谷君」

「ん?」


早速取りかかろうと立ち上がる竹谷君のジャージを掴む。引っ張られるまま再びしゃがんだ竹谷君は不思議そうに首をかしげた。


「そんな慌ててやらなくても大丈夫だよ。竹谷君は少し休憩して」

「そうか?じゃあ少しだけ。ありがとな!」


ニカッと笑って竹谷君は腰を下ろした。竹谷君の笑顔って、見てるだけで元気貰えるなぁ。私もつられてにこにこしてしまう。私は休憩していたし、先に始めよう。そう思って立ち上がろうとすると、今度は竹谷君が私の腕を掴んで引き止めた。よろけて竹谷君にぶつかるように座ってしまった。


「あ、ごめんね…」

「おー、お前もさ、どうせなら一緒に始めようぜ。俺の休憩に付き合ってくれ」

「そう?じゃあ、そうしようかな…」

「おう!」


人がやってるのに休憩するのって、気を使うもんね。竹谷君は私の腕を掴んだままで、振り払うのはしたくないし…くっついて居られるのは、少し嬉しい…。ドキドキしながらそのままくっつくほど近くに座り直せば、竹谷君は嬉しそうににこにこ笑った。


「なぁー、やっぱり教えてくれよー?」

「え、でも、大道具の仕事終わったらって約束したじゃん…」

「そーだけど、気になって仕方ねぇんだって!今日の昼もまた送ってくるし!」

「う…うう」


竹谷君が肩でぐいぐいと私の体を押してくるから、私も体重を竹谷君に掛けて対抗した。ちょっと頭を肩に乗せてみたりして…ていうか何ですかこの状況?近いし、うわああ嬉しい幸せすぎる…。


「なぁ、」


私が体重をかけたところで、竹谷君はぐいっと私の肩を引き寄せた。見上げると教室には私達しか居ないのに、ひそひそと話すように顔を近付けて来て、口元は少し笑ってる。…竹谷君、絶対私の気持ち、わかってる…。かかかと顔が赤くなるのを感じてそっとうつむいた。


「教えてくれよ」

「…だって、もうわかってる、んでしょ……いじわるだ」

「違うって。からかってるつもりはねぇんだ。俺はお前から直接聞きたいだけで…」


声色が真剣で、赤い顔のまま見上げると、間近で熱を持った瞳に見つめられる。や、やばい…かっこよすぎ……。


「たけや、くん…わたし、」

「ん…?」

「わたし、は、…竹谷君が、」



「…あー、お前ら、お取り込み中悪いが教室に入るぞ」



あ、竹谷君が開けたままの扉から鉢屋君が覗いて…み、見られ……。




「あーあ、固まっちまった…三郎、お前なー」

「私は悪くない。やるなら鍵のかかるところでしてくれ…」



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