すっかり体調の良くなった私は、次の日の朝気分も清々しく目覚めた。と言うより日中寝てたから目が覚めるのが早くて、今日はお父さんとお母さんの分の目玉焼きを私が焼いておいた。
学校に着くと何人かの友達に声を掛けられて、それを返しながら教室まで歩く。教室に入れば、仲の良い友達が私を見つけて寄ってきてくれた。


「おはよ!風邪どう?」

「おはよー。一日寝てたら元気になったよー。私が居なくてさみしかった?」

「まだ寝てるのかな?」

「ごめんなさい」

「でもさ、昨日休んで災難だったねー。文化祭の分担決め」

「ああ。何にしたの?」

「私は劇の出演者だよー。っつっても台詞一言しかないその他大勢だけど」


役者って、案外楽だもんなぁ。でも私は人前で演技をするとか絶対無理だから…そう言えば竹谷君、何役に入れてくれたんだろ…。


「ああ、あんたはね…」


「はよー!」

「竹谷はよ!」


後ろの扉がガラッと開いて教室が賑やかになる。何となくつられてそっちを見れば竹谷君達がぞろぞろと教室に入ってきた。竹谷君は友達が多いから、いつも下駄箱で捕まって大勢で教室にやって来る。一人一人に挨拶を返していた竹谷君は私の視線に気付いてバチっと目が合った。そのまま立ち止まるから、何か言った方がいいんだろうか。とりあえず手を振ってみるとハッとした様に竹谷君はずんずんとこっちに向かってきた。


「おはよ!風邪もういーのか?」

「おはよー。うん、もうばっちり。昨日はありがとね」

「いや、いいんだけどよ…」

「…?」


竹谷君は目をうろうろさせて、ちらりと友達の方を見た。あ…もしかして文化祭の役割が面倒なやつになったとか?友達と一緒じゃないから悪いと思ってるのかなぁ。


「私、何になった?」

「ん?ああ、俺と一緒の大道具にしたんだ。ダメだったか?」

「ううん。大丈夫」


大道具かぁ。文化祭までは残って準備しなきゃだなぁ。まぁ部活も入ってないしいいんだけど。


「竹谷君大丈夫なの?動物の世話があるのに」

「ああ、ちょっと抜け出させて貰えたらすぐ戻ってこれるし大丈夫」

「そっかー。その辺は私、頑張るよ」

「ああ、助かる!…あのさ、」

「うん?」


ガラッ

「皆席着けよー」


竹谷君が再び何か言いたそうに淀んで、それを聞こうとしたら先生が来てしまった。皆がざわざわと席に着いて、友達は隣の班に戻った。竹谷君は私の前の席に慌てて座る。今は6、7人で机をくっつけて班を作る形で座ってるから、竹谷君との距離は結構近い。
先生が出席を取ってHRが始まると、竹谷君はこそっと私に顔を寄せてきたので顔を近付けた。


「なあ」

「うん?」

「昨日のはさ、その…どういう意味だったんだ?」

「?昨日の…」


「おい竹谷、お前大道具の責任者だから会計きちんとしろよ」

「あ、わかりました」


先生が呼んで前を向いた竹谷君はそのままこっちを向かなくなってしまった。昨日の…?って言うと、携帯のやり取りしかないよね…。
先生がこっちを見ていないのを確認して、こそっとポケットから携帯を取り出した。アプリを起動して…ええっと竹谷君竹谷君…。


『ありがとう( ;∀;)竹谷君だいすき』

『それってどういう意味?』




「……!!!」


私は携帯を素早く机に突っ込んだ。
その勢いのまま顔を上げて竹谷君を見ると、ちらりとこっちに目をやった竹谷君が私を見て、少しだけ顔を赤くした。


それを見てぶわっと私も赤くなる。


や、や…
やっちゃったーーーー!!!!!

何これ!?全然覚えてない何これ!??寝ぼけてたのか?熱で現実と夢の区別がついてなかったのか?竹谷君と私は特別仲が良くてふざけたやり取りもする、とかなら笑って誤魔化せるけどただの同じ班の人ってだけだし…!
携帯をもう一度確認する。これ…文字だけの空間で変な空気になってるって解る…ああ…どうしよう……。


「じゃー次の化学遅れずに移動しろよー」


気が付いたらHRが終わっていて、先生が出ていった教室がざわざわと騒がしくなっていく。か、顔上げたくない…竹谷君先に席立たないかな、そうしたら…


「なあ」


今この班に残ってるのは私と竹谷君だけだ。完全に話しかけられた…。恐る恐る顔を上げると、竹谷君は私と目が合うと頭をかきながら気まずそうに目を逸らした。

それから真っ直ぐに私を見る。


「昨日のって、どういう意味だ?」

「……え、へへ」



どうか頼むから笑って誤魔化せますように。






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班タイプの席割り
  ○□□○
  竹□□○
  □□□
  主○○

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