「久々知君、尾浜君。一緒に飲んでもいい?」
「ああ」
「あき!遅いよー、さぁ座った座った」
誰と飲もうかと部屋を見回して、何処に混ざるのも怖かったけど静かに飲んでいた二人を発見したのでお願いをした。この二人は酔っ払ってないかな…?顔も赤くなってないし、何かまともそうだな。
「あき、どうぞ」
「あ、ありがと、あっ」
「あー、ほら、何やってるの」
「ご、ごめんね」
久々知君が手渡してくれたお猪口にはもうお酒が入っていて、口に運ぶまでに少しこぼしてしまった。お猪口を置いて床を拭こうとすると、私の手を制して尾浜君が拭いてくれた。
「仕方ない。俺が飲ませてあげよう」
「そうだな。あきは酔っ払ってるから心配だ。そうしてもらえ」
「え、いや、」
「ほら、あーん」
「あ、あー…」
ずいっとお猪口を口元にやられたので口を開く。お酒をこくりと飲み込めば今度は久々知君がお猪口を手に取った。お酒を飲まされる。その間に尾浜君が服にこぼれたお酒を拭いてくれた。…この二人は世話焼きになるの、かな?し、しかしお酒のペースが早い…。
「あ、あの、ちょっと休憩…」
「ん?そうか」
「…えっ、ちょ、ちょっと待って」
「どうした?」
「いや。どうして制服脱がそうとするの?」
「だって休憩だろ?制服より夜着の方が休めるだろう」
「あー、そうか。そうだな!俺も手伝おう」
「や、ちょ、ちょっとお…!」
あっさりと制服の上と中着を剥ぎ取られてしまい、残るは前掛けと下のみ。後ろ手にずりずりと後退さると、久々知君と尾浜君は不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
「着替えさせてやる。こっちへ来い。あ、厠か?手伝ってやろう」
「ち、違う!やっぱり私休憩いいや!」
「そう?でも、さっきお酒こぼれてたしベタベタして気持ち悪いんじゃない?」
「じゃあやっぱり着替えさせてやる」
「は、話が出来てる気がしない…」
引きつった笑顔のままずりずりと後ろへ逃げていると、誰かが私にふわりと制服を掛けてくれた。色は瑠璃色。と言うことは…顔を上げると鉢屋君が半目で立っていた。
「…あ、制服ありがとう」
「気にするな。そんな格好のまま居ると困るからな」
そのまま自然に鉢屋君の方へ寄って行けば、久々知君達は私を追わずに自分達の世話を交互にしていた。た、助かった…。
鉢屋君の隣に座りお酒を注ぐ。不破君は……竹谷君、もう抵抗してないな…。
「ほら、あきも飲めよ」
「あ、ありがとう…」
「制服、そのまま着てていいからちゃんと着てくれ」
ぐいと飲んだお椀を私に渡すと、鉢屋君は制服の前を合わせてくれた。ぶかぶかだ。鉢屋君はじぃっとそれを眺めて、にやりと顔を近付けてきた。
「私の制服を着ていると思うと…そそるな」
「…え、え?」
「本当はそれ一枚だけ着てほしい所だがな」
「は、鉢屋君っ」
「っくくく…」
その言葉に思わず顔を赤くすると鉢屋君は肩を震わして笑った。
「はは、冗談だ」
「もう、そんな冗談…」
「悪かったって。そう怒るな、な?」
顔を背けお猪口に口付けると鉢屋君が回り込んで顔を覗いてくる。うう、やっぱり顔が近い…。私が口を付けているお猪口の反対側に鉢屋君が口を付ける。一口のんでペロリと唇を舐めた。
「目の前に可愛い女の子が居るんだ。構いたくもなる」
「!」
「くく…」
あ、ま、また笑う…。鉢屋君、どうしたんだろう、いつもと全然違ってドキドキする…。
「三郎、あき。ちゅー」
「ふ、不破君…竹谷君はいいの?」
「はちはねー、動かなくなっちゃったからつまんない」
え…?驚いて竹谷君を見ると、寝ていた。よかった、窒息死でもしてたらどうしようかと思った…。不破君からどうやって逃げよう。また鉢屋君を生け贄にしようかな…。そう思っていると鉢屋君がずいっと不破君の前に出た。え、鉢屋君、不破君の頬に触れて…え?
「雷蔵…あんまりあちこち行くな。私に妬いて欲しいのか?」
「違うけど…僕はちゅーしたいからしてるだけだよー」
「はぁ…なら私にしておけ。他の奴に口付ける雷蔵なんて、あまり見たくない」
「わかったよー」
「くく、素直な奴だな」
あ…もしかして、鉢屋君は酔うと口説きたくなる…のかな?あと笑い上戸…。何だか先程の鉢屋君と不破君のやり取りは見てはいけない物を見てしまった気分で…わたしは手元のお酒をぐびりと飲んだ。
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