「ねぇ、あき…」

「う、うん…わかったから…鉢屋君!」

「無理」

「そんな雷蔵、俺等も初めてなんだ…動き封じようとすると笑顔で殴ってくるし手に終えねぇ…」

「そ、そんな…」


不破君から逃れようと鉢屋君に助けを求めれば、目も合わさずに拒否された。竹谷君も肩を落としている。よく見るとこの二人ボロボロだ…戦った後だったか…。肩に腕を回されて引き寄せられる。不破君は以外と力強いから、びくともしない。頬に触れる柔らかいもの。


「ふ、不破く、ん…」

「ふふ、やっぱり女の子は柔らかくていいなぁ…唇はもっと柔らかそう…あき、しよ?」

「…!ま、まって、」


肩を引いて逃げようとするも、不破君も一緒に付いてくる。バランスがよろけて肘で手を付けばもう逃げられない。しまった、引くより押した方が逃げれた。間近で柔らかく微笑む不破君の後ろで鉢屋君と竹谷君が合掌していた。


「んっ、んー!」

「んー、」

「んんー!!」

「ん」


「…………ぷはっ」

「ふふ…唇はやっぱり柔らかい。この中はどうかなあ」


この中、と不破君は大きく呼吸をする私の口の中に指を入れてくる。う、舌、撫でるとかぁ…。


「ん?ちゅーして欲しそうな顔してるよ…」

「ふ、ふわくん……」

「ふふ、いいよ、ちゃんとしてあげる…」



「ふわくん…はちやくんがうらやましそうにみてるよ」

「は…?」

「何だよぉ、三郎。そんなにしてほしかったのか?そうなら言えばよかったのにー」

「ま、待て私はもう満足してるか、んんー!!!」


よ、よかった…不破君がまさかキス魔だったとは…覚えておこう…。鉢屋君が視線でてめー覚えてろよ、とギロリと睨んできている。わかった、合掌しておこう。…あ、余計怒ってる。そう考えていると後ろからひょいと持ち上げられた。


「あ、竹谷君…どうした、の?」

「ん?いやー、何か軽そうだなぁと思って…やっぱ軽いな!」

「そうかな…?あの、下ろして…」

「んー?あははははー」


そう言えば…立花先輩、そいつら潰しておいたって言ってたな…竹谷君も酔っ払ってるのかな?さっきは普通に会話出来てたんだけどなぁ…。


「た、竹谷っ、君、やめっ!」

「かるいかるーい!」

「ひゃわわわわ」


竹谷君はお手玉の様に私を上へと投げ始めた。す、すっごい笑顔…もしかしたら竹谷君は力自慢系?になるのか、な…ていうか怖いいい!!


「あ、やべ」

「えっきゃああーーー!!」


竹谷君の力余って私は部屋の端まで飛ばされた。どうなってんの竹谷君…!酔うと秘められた力出ちゃうのか!?


「ーーあああっ!!…あ、潮江先輩、ありがとうございます…」

「…俺は何もしてねぇ…お前が勝手に降ってきただけ」

「そうですか…」


着地したのは潮江先輩の膝の上。よかった、蝋燭にぶつかんなくて…立ち上がろうとするも、あぐらをかいた潮江先輩の膝におしりがすっぽりはまってしまって立てない…重心が後ろにあるから難しい。潮江先輩に押してもらおう。その状態のまま後ろに首を捻ると潮江先輩を見上げた。


「潮江先輩、あの、よければ背中を…」

「…臨兵闘者皆陣列在前臨兵闘者」

「あ、あの…」

「悪い、手貸すからどいてやってくれ…」

「あ、は、はい…」


食満先輩がぐいっと腕を引いてくれたので潮江先輩の足から抜け出せた。力が強くて一度食満先輩の胸に飛び込んでしまった。鼻打った痛い。すいません、と見上げると食満先輩は困ったように鼻の頭をかいた。


「あの、潮江先輩は一体…」

「ああ、放っといてやれ。あいつは俺に弱味を見せるのが嫌なだけだから…」

「そう、なんですか…?」


それとこれの何の意味があるんだろうか。まぁ、いいか…。


「ほら、飲めよ」

「あ、このじょう……ん、く。…この状態で飲むのは辛いですよ」


私の体勢は未だ食満先輩の腕の中で、胸を支える手に重心を掛けていて避けられず傾けられるままにお猪口の酒を飲まされた。眉を寄せて見上げれば、食満先輩は勢いよく後ろに倒れた。私も道連れだ。


「わ、わあっ」

「あき、大丈夫か。こっちへ来い」

「あ、ありがとうございます…」


立花先輩に腕を借りて起き上がる。食満先輩、ぴくりとも動かないけど大丈夫かな…。


「ほら、こいつらはもう駄目だ。他の奴と飲んでこい。ちゃんとサボらず飲めよ」

「は、はい…わかりました」


少し心配だったけど、立花先輩が居るし大丈夫だろう。私は立ち上がって背中を向けた。うーん、誰と飲もうか…。



「文次郎、留三郎しっかりしろ」

「はぁ…あいつマジか…」

「標準装備で瞳潤ませてるし、無意識に顔近付けてるし危ねぇ…」

「ふん、あいつは作法の者だぞ。酒の席の作法を教え込まん訳ないだろう」

「仙蔵仕込みかよ…」

「いや。私が教えたのは酒の席で騒がない事と男をあまり拒否しない事だな。他は自前だ」

「た、質悪ィ…!」


そんな事をしていると、その内誰かが食べてしまうのでは?二人は心配になった。




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