「兵太夫くぅん…持ってきたよぉ」
「よし」
自室でからくりを作っている兵太夫君によろよろと近寄る。私は兵太夫君に指示されて桶いっぱいの水を汲んできた。
こぼさない様にそぉっと床に置くと、兵太夫君の手元を覗きこむ。
「兵太夫君、何作ってるの?水どうするの」
「うん、ちょっと」
いやだからそれ答えになってないよ…。
兵太夫君の手元を見ても、何かいじってる、くらいの事しかわからなかった。いじってる、っていうか、さっきから色んな角度から変な箱を覗いてる様にしか見えない。
「これ、立花先輩に貰ったんだ。南蛮のからくりで、普通には開かないらしいんだけど」
「へぇ〜。ちょっと力入れたら箱なんて開くんじゃない?」
「七松先輩に渡してみたけど無理だったって言ってた」
なるほど、あの人並み外れた先輩の怪力で開かないなんて、よっぽどだ…。
七松先輩の怪力ぶりは、前に唐渡りから都のお殿様に贈られたっていう、ぞうって物凄い大きな生き物が旅していたのを見に行ったけど、あれくらいはあると思う。あれ凄い怖かった。踏まれたらペラペラになりそうだし何か顔色悪いし怖かった。
「しかし水はどうするの…」
「あぁ、水はこうするの」
兵太夫君は立ち上がると長屋を出ていった。縁側から「桶」と声がしたのでずるずると桶を引っ張って私も縁側に出る。
兵太夫君に桶を渡すと、庭に置かれたさっきの箱目掛けて桶を勢いよくひっくり返した。
「ああっ!持ってくるの大変だったのに!!」
「あき、いいから見てよ」
見てよと言われ箱を見ると、何故だか箱の色が変わっているではないか。さっきまで水色だったのに、今は赤色に変わってる。す、凄い!!
「兵太夫君、凄いね!!お水で反応があったよ!!」
「うん。やっぱり間違ってなかったんだー!」
「兵太夫君、あったまいー!!」
嬉しくて二人でぴょんぴょんと手を取り合って跳ねる。さっきは人の苦労を何だと思ってんだと言いたかったが、まぁいっか!
「ねぇねぇ、早く開けてみよーよ」
「いや、まだ」
「え?」
「これ、水で色変わってる所と変わってない所あるし、まだ不十分だよ。あきもう一回水汲んできて」
「え゙…!」
「水掛けるんじゃなくて桶に箱を浸ければよかったなー。手間になっちゃったよ。早くしてね」
「そっ…それは私の台詞だよー!!?うわーん!!」
結局、もう一度水を持って来さされた。十分に水を掛けると、わくわくする私に一番は立花先輩だから。と言ってさっさと消えてしまった。
お、御礼くらい…言えー!!!
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箱ではなくてブロックなので開かない。
室町時代に可逆変化の物体はありません…。南蛮から来てれば不思議な物も通用すると思っててすいません。
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