※一話だけ 先輩と忠犬01 にリンクしてます。読んでないとちょっと意味がわからないかもしれません…。









くの一教室に入学して数日。
先輩達が妙にうきうきしているなぁと思っていたら、毎年この時期、恒例で忍たま新入生を『歓迎』するのだと言う。


「貴女達は、来年からするんだから陰から見学してしっかり見ててね」


にまにまと笑う先輩達は楽しそうで私達新入生もわくわくした。すぐにぞろぞろとやって来た忍たま達に、先輩に指示されてそれぞれ隠れた。


しばらく草むらの陰で待っていると一人の先輩が忍たまの手を引いて歩いてくる。


「君、名前は?」

「僕は兵太夫」

「兵太夫君。好きな事は?」

「からくり…」

「そうなんだ!」


からくり好きの兵太夫…。彼に一体何が起きるのだろう。照れているのか視線を合わさない彼に先輩は愉快そうな笑顔を浮かべていた。


「兵太夫君、からくりが好きなら、こんなのはどう?」

「?」


不思議そうな彼の手を引く先輩は、にんまりと笑って向き合うと、トンッと彼の胸を押した。その勢いのまま数歩後ろに下がると、彼の右足がズボッと土に埋まってしまう。


「う、うわあっ!?」


驚いてしりもちをつくとそこにも穴が開いてお尻がすっぽりとはまってしまった。もがく彼の目の前にはロープが吊るされていて、咄嗟にそのロープを掴むと彼は慌てた。


「な、なんだこれ、手が離れなくなった」


ひゅるひゅるひゅる、と音がして、上を見上げると彼の握るロープの反対側に結ばれた大きな岩が落ちてきた。驚き慌てて逃げようとしたけど、その前に彼の体が浮き上がった。


「わっ、わあぁぁ!!」

「これからも、くのたまと仲良くしてねー。じゃあねー!」


岩の重さで木の上まで飛び上がって吊るされた彼に、先輩はひらひらと手を振って帰ってしまった。そこには唖然とした表情の彼が残るだけ。


「……ププッ」


私は思わず笑ってしまった。
いやぁ、いいもの見れた。あれを、来年は私達がやるんだなぁ。是非参考にさせて貰おう。

その時私は気付かなかった。彼が吊るされた木は私が潜む草むらのすぐ横で、私から彼が見えると言うことは彼からもバッチリ私が見えていると言うことに。いや、気付かなかったんじゃない、わからなかったんだ。私は阿呆なのだ。



「おい…お前笑ったな……」



閻魔様の様な声を聞き私は青ざめて顔を上げたのでした。










「へ、兵太夫くぅん…終わりましたぁ」

「よし」


草むらに隠れる兵太夫くんにノロノロと近寄る。彼に手伝わされた草罠のノルマ百。を必死こいて達成させた。


「ねぇねぇ、こんなに作ってどうするの?」

「まぁちょっと」


いや答えになってないよ…。
私はあの時から、何故か兵太夫君にいいように使われている。何で?私別に従う必用なくない?でも、兵太夫君の鋭い視線が怖くて…もう本当に怖かった。閻魔様が居るならきっとあんな感じだと思った。

兵太夫君の隣で一緒に隠れていると、向こうからこちらにやって来る姿が見えた。あれは山田先生…と一年は組の三人組。


「今日、乱太郎達、手裏剣の補習授業なんだ」

「もしかして、あの三人をこけさすの?」

「そーいう事」

「ねぇ、わかったけど、草罠百も必要だった?それ」

「あの三人なら何かやらかしてくれそうだなー」

「ねぇ、聞いてる?」


しばらく見ていたら、三人は補習を開始した。手裏剣はへろへろへろと地面に落ちて、山田先生が拳を作って怒鳴っている。手裏剣の補習、私もやった。シナ先生は怒鳴んないけど、冷たく笑うからあれも怖い…。雪女が居るならきっとあんな感じだと思った。

なかなかこけないなぁ。ていうか、あの辺私草罠作ったかな…?もう少し手前までしかやってない気がする…。兵太夫君には言うまい…。
嫌な意味で心臓をドキドキさせていると、また向こうからやって来る姿が見えた。あれは…。


「兵太夫君…」

「何」

「善法寺先輩、来たよ」

「え?」


兵太夫君は面倒そうに袖を引っ張る私を振り返って、私の指差す方を見た。
トイペを抱えた善法寺先輩がゆっくりと歩いてくる。そして



「あ」



派手にトイペを散らばらせながらこけた…。
さらに、こけた善法寺先輩に飛んでくる三人組の手裏剣。







「ねぇ、兵太夫君」

「…何」

「私、先輩と目が合っちゃったんだけどさぁ…一緒に謝りに」

「知らない」

「な、何で!?見たでしょ!?ていうか兵太夫君も目合ったでしょ!?!??クソガキってこっち見て言ってたじゃん!??ねぇ!私怒られるよぉ…!あの先輩めちゃめちゃ勘がするどいんだから!!事善法寺先輩に関しては!!!」

「……あっ、作法委員会の時間だ」

「ねぇ!!無視すんな!!!」






結局、その晩一人で目の笑ってない先輩の前で正座した。半泣きの所を善法寺先輩に助けられた。





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