「虎ちゃんで、どんな感じの子が好きなのかな。」



私の質問にダビ君は眉間に皺を寄せた。
近所のテニスコートはみんなが小さい頃から来ていて、今日は久々にみんな集まって打ち合っていた。勿論虎ちゃんもいる。



「いきなりどうした?」

「その、虎ちゃんもうちょっとで誕生日でしょ?」

「そうだな。」

「日頃からお世話になってるし、何かできたらなーって思って。」



もうすぐ虎ちゃんの誕生日。虎ちゃんにいつまでも子でも扱いをされるので、虎ちゃん好みの女の子になったら?と友達に言われ・・・・。
それをそのままダビ君に話したら、今に至る・・・・。



「それとこれとは関係ないだろ。」

「で、でも・・・・。」

「それに、碧はそのままでも可愛い。」



ダビ君はそう言うと、オレンジジュースのパックをすすった。
その言葉に少し驚いてダビ君を見つめるが、彼はいたっていつもと変わらない表情だった。



「サエさんの好みのタイプは束縛する子、だったな。」

「そ、束縛?」

「うぃ。まぁ、中学の時の話だけど。」



虎ちゃんから想像もつかないような話を聞いた。私として見ればその情報はあまり役に立たなそうだ。



「服の好みとか、分かる?」

「うーん・・・・・・。」

「あと、欲しいものとか・・・・。」

「欲しいもの、ね・・・・・・。」



ダビ君は視線を上げて考えているようだったが、やがて私の方を見た。
そして何も言わずに私の頭をがしがしと撫でる。



「わっ。」

「サエさんだったら、何でも喜ぶと思う。」

「俺が何だって?」

「虎ちゃん。」



ダビ君の手が離れると、後ろから虎ちゃんがやってきた。ダビ君と私の間にやってきた虎ちゃんに、タオルを差し出す。そんな虎ちゃんを見ながらダビ君がオレンジジュースのパックを潰した。



「ありがとう。」

「うん。」

「ねぇ、サエさん。」

「何、ダビデ?」

「今欲しいものって、ある?」



潰したパックのストローを咥えたままダビ君が虎ちゃんにそう言った。私は驚いて目でダビ君に訴えるが、隣で虎ちゃんは「うーん」と唸っている。



「時間、かな。」

「時間?」

「あ、碧ちゃんだ!」

「剣ちゃん。」



虎ちゃんの言葉を遮るように、コートから剣ちゃんの声がした。見れば手招きをして私を呼んでいる。



「行ってきなよ、碧。」

「う、うん・・・・。」



促されるように立ち上がると、虎ちゃんが小さく手を振った。
私はそんな虎ちゃんを想いながら、時間というプレゼントをどうしようか真剣に考えた。




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