私は霊感というものがない。友達でそういうモノが見えたりする子はいるが、私はまったく見えない。見えても困るけど・・・・。
この時期になるとテレビでそういう番組が多くなる。嫌いではないが、苦手。
今もたまたま付けた番組がそれであり、チャンネルを回す前に心霊映像が映った。思わず持っていたリモコンを落とす。
急いでリモコンを拾ってチャンネルを変えた。
嫌いではない、嫌いではないんだけど・・・・怖かった。
その後、洗い物をしてても、頭を乾かしてても、歯を磨いていても・・・・・瞬間的にさっきのを思い出してしまっていた。その度に頭を振って無理やり別の事を考えた。
さっさと寝てしまおう、うん、それがいい。電気を消して布団の中で丸くなると意地でも目を瞑っていようと決めた。
しかし、夜中うなされて目が覚めた。目を開ければ、全身汗がびっしょりだった。どんな夢なのかは覚えていないがただ怖かったのだけは覚えている。ちょっと落ち着いて水でも飲もう。それがいい。
しかしそれも裏目に出てしまっているみたいだ。
起き上がりたいのだが、起き上がれなかった。何かが私を押さえつけている感じ。動かせる視線だけを動かせば、私の腰に腕が回っているのが暗闇でもはっきり分かった。
こ、これが世に言う金縛り!?



「んっ・・・。」



しかし私の予想は聞こえてきた小さな声であっけなく崩れた。
もう一度勇気を振り絞って私の腰に回る腕をたどると、そこにいたのは幽霊ではなかった。



「・・・ヒカル君・・・・。」



そこには、ヒカル君が私を抱き枕にして寝ていた。どうりで動けないはずだ。途端に力が抜けてしまった。



「・・・起きてたのか。」



そんな私に気づいたのか、ヒカル君が小さくそう言った。私は彼の腕が緩んだのを見てくるりと寝返りをうってヒカル君の方を向いた。



「うん、ちょっと前にね。」

「そうか。」

「ヒカル君、今日黒羽先輩達と飲んでくるって言ってなかった?」

「お前に会いたくなったから、途中で抜け出してきた。」



お酒のせいなのか、眠いのかいつにもまして饒舌だった。ヒカル君は私の髪を梳くと毛先を指でくるくると遊び始めた。



「・・・ヒカル君。」

「何だ。」「“大丈夫”って言って。」

「何でだ?」

「お願い。」

「・・・・・。」



私がそう言うとヒカル君は私の髪から手を離すとまた私を抱きしめた。
自然とヒカル君の胸に耳を当てるとそれだけで安心する。



「雪。」

「うん。」

「大丈夫だ、俺がいる。」

「・・・うん。」



私もヒカル君の背中に腕を回せば、さっきの怖さなんて溶けてしまって変わりに甘い気持ちがこみ上げてきた。
そして綺麗なヒカル君が顔が近づいてくる。



「ありが、んっ。」



お礼を言う前にキスされた。優しく笑うヒカル君にキスされながら、怖い夢なんて彼といればもう見ないんだろうなと思った。



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