「チョコ食べたい。」


そう言ったのはヒカル君。いつもと違うのは距離が近い、そしてヒカル君越しに部屋の照明が見えると言う事。



「あ、朝バレンタインチョコあげたよね?」

「昼前に全部食べた。」



そう言えば黒羽先輩が「貰ってすぐ食ってたぞ」と言っていた気がする。
しかし。今はそれどころではない。ちょっと一旦落ちつこう。何でこんな事になったんだっけ??
テスト期間中だから私の家で勉強会する事になって、朝練終わりの葵くんにバレンタインチョコをあげたって話をして・・・今に至る。
これは俗に言う床ドンというやつですね。はい。



「ついでにお前があげた涼君のとサト君のチョコも俺が食べた。」

「え、食べちゃったの?」

「美味かった。」

「うん、そういう事じゃないんだけど、」



言い終わらないうちに唇にキスされた。軽く何回も、しかもリップ音付きでされて一気に体温が上昇するのが分かる。
と、とりあえず何とかしようとヒカル君顔を手で押してみる。



「す、ストップストップ!」

「・・・何で?」

「何でって、何で?」

「何でって、何でって、何で?」

「そうじゃ、なくて!」

「サエさんとかバネさんにもあげたの?」



言われるまでもなくこれはチョコの事なんだろうな、と思い素直に頷いてみる。
確かに今年は皆さんにと思ってバレンタインチョコをあげた。葵くんがその第1号だった。
ヒカル君は眉間に皺を寄せて明らかにムスッとした表情になった。そして私の手を取るとそのまま今度は私の手にキスをする。やっぱりリップ音付きで何度も。
至近距離でそれをやられてそろそろ本当に思考回路がショートし始める。



「ごめん、ね?だ、だって私行った時ヒカル君もういなかったんだもん。」

「・・・呼んでくれたら戻った。」

「お、女の子から物貰うの、に、苦手なんじゃ、」

「雪は、別。」



ヒカル君はそう言うと、私の手に自分の手を絡める。少し骨ばってて大きい手だ。その手も少し熱い。
もしかして、ちょっと拗ねてる?



「・・・チョコ食べたい。」

「い、今ないよ?」

「なら、他の甘い物。」

「他の?」

「これ。」



囁くようにそう言うとヒカル君はまた唇にキスをする。今度は長めで、息が出来ない。何だか食べられてる気分だ。
ようやく唇が離れたと思ったら至近距離で目が合った。そしておでことおでこが合わさる。



「・・・甘い?」

「・・・ムードないな、お前。」

「へ?」

「何でもない。」



そう言って笑いながらヒカル君は手を解くと、私のわきに手を入れて私を抱き上げた。咄嗟に抱きつく。視線が下にあっていつもと逆転していて何だか不思議な気分だ。



「来年は、1番に頂戴。」

「チョコ?」

「そう。俺専用ので一つよろしく。」

「はぁい。」



そう言ったヒカル君はいつもの優しいヒカル君だった。そしてまたまたキスされる。腕が私の腰に絡み付いてきて、するりと服の中に手が入ってきた。
今日はもう勉強は無理かな・・・そう思いながらヒカル君の首に腕を回した。

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