最近変わった事と言えば、よく部活が終わってから一緒に帰るようになった。
天根君が部室から出てくるまで教室で待ってたり、テニスコートの端だったり、校門だったりと待つようになった。(時には部室でということもあるけど)
『お前、今度の日曜日誕生日らしいな。』
そんなある日の帰り、もう少しで分かれる道に差し掛かりそうな所でぽつりと天根君がつぶやいた。
隣を見上げるとポッキーを食べながら私を見つめる天根君の姿があった。葵君に貰ったらしい。
『あ、いるか?』
『うん、ありがとう。』
私は天根君が持っていたポッキーの袋から一本貰う。口に咥えるとパキっという音がして折れる。
天根君もそんな私の隣で咥えていたのをぼりぼりと食べている。なんか可愛い・・・。
『瀬名?』
『えっ!?あー、うん。そうそう。』
『忘れてたのか?』
『忘れてはいないよ。』
『パーティーとかするのか?』
『しないよ。去年はやったけど、今年はお父さん仕事だし、弟は部活だと思うし。』
『友達とは?』
『友達からもプレゼントは貰うけど中学校入ってからはやらなくなったかな。あっ、でもテニス部の人たちはそういうの好きそうだよね。』
『あぁ、毎年やってる。』
なんとなく想像できるなぁ。男子テニス部のみなさんは仲いいから。
その中に天根君も含まれていると思うと何だかとっても微笑ましく感じる。
『じゃぁ用事は何もない?』
『うん、夕飯の買い物には行こうと思ってるけど。』
『・・・・・そう。』
天根君はそう言うと視線を少し外した。そしてまた袋からポッキーを2本取ると、その1本を私に差し出した。
『最後の2本。』
『ありがとう。』
私がそれを受け取ると空になった袋を天根君が片手で丸めた。そして箱の中に袋をしまうと、また私に視線を戻した。
『用事ないなら日曜日、出かけないか?』
一瞬何を言われたのか分からなかった。
え?え??
『・・・・聞こえなかったか?』
『いや、聞こえて、ました!!』
表情一つ変えてない天根君。あまりにもなんかこう、サラッと言われたから・・・・・。
顔が熱い。思わず立ち止まってしまった私に天根君も立ち止まり振り返る。
『急に用事が入ったなら、諦めるけど。』
『な、ないです。』
『なら、いいか?』
『うん・・・・。』
頷いた私に、天根君も黙って頷いた。そしてまた歩き出す。
この時の私はあっさりOKしてしまったけど、後からやっぱりこの前みたいにパニックになったのは言うまでもない。
でもこの時の私は早くなった心臓をそのままにしてその背中を追いかけた。
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