時計を見ればいつの間にかお昼をすぎていた。
なので、俺たちは水族館の中にあるレストランで昼飯をすますと、ついでにアイスでも食べようという事になった。
「わぁ、結構種類あるね。」
「そうだな。」
「私、チョコにしようかな。天根君はどうする?」
「・・・・イチゴミルク。」
「決まりだね。」
「そうだな・・・・これは奢る。」
「え、いいよ。」
「お前、今日誕生日だし・・・。」
「だからと言って奢ってもらうのは悪いよ!」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
忘れていた、こいつは頑固だったんだ。
そうこうしている間に俺たちに順番が回ってきて、店員さんがにこにこと「次の方どうぞ」と言っている。
「チョコとイチゴミルクお願いします。」
「はい、少々お待ちください。」
店員さんがそう言うと瀬名が財布を取り出したので、俺はすかさずその前にお金をレジに出した。驚く瀬名をよそに店員さんは俺が出したお金を受け取りお会計を済ませた。
ちらりと瀬名を見れば納得いってないような顔をしながらも鞄に財布を戻していた。そんな姿に思わず笑いそうになる。
「お待たせしました。はい、どうぞ。」
「どうも。」
そしてカップを受け取ると、瀬名の分のアイスも持って近くの席に移動した。
瀬名はカップ。俺はコーン。
席に座って瀬名にカップを差し出すと、まだ納得がいっていないようだった。
「後でお金返すね。」
「いや、いい。」
「・・・・・・・・。」
黙ってカップを受け取った瀬名は視線を外して少し頬を膨らませた。そんな彼女を見つめながら、付いていたスプーンでアイスをすくって口に運ぶ。美味い。
瀬名もカップのアイスをすくって口に運ぶのが見えた。
「拗ねるな。」
「拗ねて、ないよ・・・。」
「俺のアイス少しやるから、機嫌直せ。」
「だから、機嫌悪いわけじゃ・・・・・・。」
瀬名はそう言うとまた俺に視線を戻した。俺は瀬名の前にコーンにのったアイスを差し出す。彼女の視線が俺からそのアイスに移った。
「・・・・じゃぁ、ちょっと貰うね。」
「別にちょっとじゃなくてもいいけど。」
「・・・ん!こっちも美味しい!」
そう言うとみるみるうちにいつもの瀬名に戻った。そして自分の持っていたカップを俺の方に差し出す。
「天根君もどうぞ。」
「いいのか?」
「どうぞどうぞ。」
「じゃぁ遠慮なく。」
俺はカップの中のチョコアイスをスプーンですくうと、また口に運ぶ。チョコの甘さとアイスの冷たさが絶妙だった。
こっちも美味い。
「どっちも美味しいね。」
「そうだな。」
そう言って笑った瀬名は俺が一番好きな表情だった。
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