「そうだ、ダビ君。」
「何だ?」
移動教室の帰り、同じクラスの星野に声をかけられた。
「知ってる?」
「何がだ?」
「瀬名さん、もうすぐ誕生日なんだって。」
「・・・・・・。」
星野のその言葉に固まる。
次の休み時間に瀬名と仲がいい坂本を捕まえて星野から聞いた事をそのまま訪ねた。
「そうだよ。何ダビデ、もしかして知らなかったの?」
「・・・・・。」
黙って頷くと坂本に呆れたようにため息をつかれた。
「まぁ、雪はそういうのあんまり気にしない子だから大丈夫だと思うけど、何かしてあげたら喜ぶと思うよ。」
坂本はそう言って俺の背中をばしばし叩いた。
誕生日、誕生日・・・・・俺の誕生日は祝ってもらったんだから、あいつにも何かをしてやりたいと思う反面、ホワイトデーの時以上に悩む事になってしまった。
「誕生日?」
見かねた俺にサエさんが練習終わりに声をかけてきた。事情を説明すると「うーん」と腕を組んだ。
「何かしてあげたい、って事なんだね。」
「そう。」
「だったらあれいいんじゃない?」
「あれ?」
「自分がプレゼント、ってやつ。」
笑顔でそう言ったサエさんの頭に瑠璃さんの持っていた部誌が容赦なく振り下ろされた。
「ダビデ、サエの言葉なんて綺麗さっぱり忘れなさい!」
「う、うぃ。」
「それに大丈夫。彼女ちゃんはおめでとうの言葉だけでも喜ぶと思うよ。」
「・・・・・・。」
瑠璃さんにそう言われたものの、やっぱり答えは見つからなかった。
そのまま家に帰ると、バイトに向かうと姉貴とすれ違った。
「あっ、おかえり。」
「・・・・ただいま。」
「どうしたの?またダジャレが浮かばないとか?」
「・・・・・。」
「まぁいいや、はいこれ。」
そのまま姉貴の横を通り過ぎようとしたら姉貴に水玉の封筒を渡された。
「何これ?」
「水族館のペア招待券。あんたにあげる。」
「何で?」
「・・・・・・・。」
「あぁ、彼氏と別れた、」
「行ってきます!」
姉貴は俺に封筒を無理やり押し付けると、そのまま音を立てて玄関のドアを閉めた。そうだった姉貴が最近彼氏と別れた話は禁句だった。
封筒を開くと2枚目水族館の入場券が入っている。貰ったものの、いつものメンバーで行くには数が・・・・・・。
「!」
これだ。
封筒を見つめながらそう思った。
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