「どうだった、カピバラ。」
「思ったよりデカかった。」
「やっぱりみんな最初はそう思うんだね。でも可愛かったでしょ?」
そう言って笑う瀬名の方が数倍可愛かった。
電車の中でもころころと表情を変えていた瀬名も可愛かったけど。あ、間違えた、可笑しかった。
「でもほとんど動かないんだな。」
「のほほーんとしてたでしょう?」
「あぁ、お前みたいだった。」
「私?」
「うぃ。」
館内を歩きながらそんな話をする。途中瀬名がまたパンフレットを広げた。館内の地図が載っていて所々には魚や動物の写真もある。
「あ、天根君。」
「何だ?」
「ここ行かない?イルカ。ショーのイルカがいるよ。」
そう言ってパンフレットを俺に向けて指をさす。今いる所を少し戻ってすぐだ。
俺が黙って頷くと瀬名は楽しそうにくるりと踵を返した。そして歩き出す。
そんな瀬名の後を追うと、大きな水槽が見えてきた。少し薄暗いそのスペースに水の青がゆらゆらと輝いていた。
「うわぁ。」そう呟いた瀬名は早足で水槽に駆け寄った。
周りを見回せば俺達しかいなくて、何だか不思議な気分になった。
俺も瀬名の横に行くと、瀬名は手を付けて大きな水槽を見上げる。
「・・・・綺麗。」
水槽の中には青い光に照らされて気持ちよさそうに泳ぐイルカがいた。
イルカショーができないから退屈してるんだろうなと思っていたが、なんだか楽しそうだ。
いかにも深そうなこの水槽から見上げる太陽は、白く歪んでいる。
「海の中にいるみたいだね。」
「そうだな。」
イルカは俺達の前まで来るとくるくると回りながら上に上がっていく。その後に出来た泡も青く輝いていてまるで宝石みたいだと思った。
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