「あ、天根君、元気出して。」



瀬名はそう言うと俺の背中をぽんぽんと叩いた。
水族館に着いた俺たちは、イルカの生態調査をするべく真っ先にイルカショーに向かうことにした。
しかし・・・・・・・。



「まさか、会場が改修工事中だとは・・・・。」



イルカショーの会場前にには『改修工事のお知らせ』の文字が。
その横にはこの水族館のキャラクターが吹き出しつきで「ちょっと待っててね」と書かれている。
俺はその文字を少し呪うと、頭を抱えた。



「・・・・悪い、確認してくればよかった・・・。」

「気にしないで。」



そう言う瀬名が一番イルカショーを見たかっただろうに、俺の隣で笑っている。
それを見てますます自分が情けなく思えてくる。



「イルカショーは見れないけど、ほら、カピバラならいるよ。」



瀬名はそう言うと、俺の前にパンフレットを広げて指差した。そこには写真こそは載っていないが確かにカピバラと書いてある。



「天根君、どんなのか分からないんでしょ?」

「あ、あぁ・・・。」

「じゃぁ最初はこれ見に行こう。ね?」



そう言って俺の服を引っ張る。そんな一つ一つの仕草に俺はいつの間にか癒されて、くすりと笑ってしまった。



「分かった。」

「やった。」



嬉しそうに笑うと瀬名はそのまま俺の服を引っ張って歩き始めた。
その手がもどかしくて、俺は先を行く瀬名に声をかける。



「あんまり急ぐと、転ぶぞ。」

「気を付けます。」

「そうじゃなくて・・・・。」

「??」



きょとんと俺を見つめている瀬名に、ため息が出た。
勿論呆れてたとかそういうのじゃなくて、なんていうか、うん。俺はこいつを好きなんだな、っていうため息。
俺は半分諦めて瀬名にそのまま引っ張られてカピパラの元に向かった。



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