目的地までは電車で行くらしい。
天根君の後ろを付いていきながら、改札を通る。そして階段を下ってホームに出ると、数人の列の裏に並ぶ。



「ねぇねぇ、どこまで行くの?」

「言ってなかったか?」

「うん。」

「そっか。」



天根君がそう言うと、ホームに電車がやってきた。
短く「これ」と言った天根君の後に続いて、その電車に乗り込んだ。



「水族館に行く。」

「水族館?」

「そう、最近できたとこ。」

「あぁ、最近よくCMで見るあの水族館!」



最近リニューアルしたらしい水族館はテレビでも特集をくまれるほどやっていて、そんなテレビを見ながら私もぼんやりと行ってみたいなーと考えていた。



「招待券貰ったんだ。」

「へー、凄いね。」

「まぁな。」



天根君は自慢げにそう言うと笑った。
車内は休日なだけあって混んでいた。立っている人も結構いる。天根君と私もその中の一人で、反対側のドアに向かうと天根君はそれに背中を預けた。私もその隣に立つ。しばらくして電車が動き出した。こっち側のドアは当分開かないらしい。



「結構混んでるね。」

「そうだな。」

「あっ、その水族館なんだけどねイルカショーが人気なんだって。」

「イルカか・・・・イルカのスマイルか・・・ぷっ。」

「上手い。」

「ふっ。」

「でね、そのイルカショー抽選で当たった人はイルカと握手できるんだって。」

「それはすごいな。」

「でしょ?いいなぁ、イルカってどんななのかな?」

「どんな・・・・?」

「うん。やっぱりぬめぬめしてるのかな?それとも柔らかいのかな?」

「・・・・ぬめぬめはしてないと思うぞ。」

「じゃぁ柔らかいかな?」

「うーん・・・・・・。」



天根君はそう言って頭をかいた。そしてジャケットのポケットに手を入れると、瞳が柔らかくなる。



「でも。」

「何?」

「・・・当たるといいな。」

「・・・・・・そうだね。」



つられて私も笑えば、本当にそうなるような気がした。


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