そしてその当日。
息を切らせながら待ち合わせの場所に付くと、天根君の姿はまだなかった。
時計を見てまだ待ち合わせの時間よりも10分早い。
今回は何とか天根君を待たせないという事に成功し、ほっと息を付いた。



「よかった。」



あれから待ち合わせの場所とか時間とかをメールで決めた。
あんなにメール続いたのは初めてかもしれない。嬉しくてちょっとにやけた。どこに行くのか聞くのを忘れていたのに後で気づいたけど。
いつもの帰りの待ち合わせとは違った雰囲気で、なんだかいつもよりもドキドキする。会う前からドキドキしてるなんてちょっとおかしな話だけど。



「何がよかったんだ?」



ほっとしている私の後ろから聞きなれた声がした。いや、聞きなれたどころじゃない。
振り返ると、そこには私服姿の天根君の姿が。



「あああ天根君!?」

「おはよう。昼近いけど。」

「じ、じゃぁこんにちは。」

「うぃ。」



まさか天根君ももう来ていたとは・・・・。という事は結局私はまた彼を待たせてしまったんじゃ・・・・。


「待ったか?」

「今来たところ。・・・・天根君は?」

「俺も今来た。タイミングがよかったな。」



天根君はそう言うと私の頭を撫でた。
本当にタイミングがよかったのかもしれない。本当によかった・・・・。彼に頭を撫でられてようやく本当に安心した。



「お互い早かったな。」

「どうしようか?」

「少し早いけど、行くか。」

「うん。」

「・・・・・・・・。」

「ん?」



そう言った私を天根君はじっと見つめてきた。
え、もしかして何か変だったのかな?髪型?服装?ご飯粒付いてるとか?
そんな事を考えながらそんな視線に耐えきれなくなった私が口を動かそうとするのと同時に天根君の視線が外れた。そして歯切れ悪く「その」とか「えっと」とか呟く。



「天根君?」

「・・・・・瀬名。」

「は、はい。」



私の名前を呼んだ天根君はまた私に視線を戻すと、少し頬を赤くして私にだけ聞こえるぐらいの声でつぶやいた。



「誕生日、おめでとう。」



そう言うと天根君はくるりと後ろを向いてしまった。
私は一瞬固まった。そしてじわじわとまた上がってきた熱で頬が緩みそうになるのを必死でこらえた。
やっぱりさっきの自分の言葉は正しかった。
会う前よりも、会った後の方がもっとドキドキする。間違いなく。うん。


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