(曖昧ラプソディと繋がっていないようで繋がっているような佐伯

今年のバレンタインは剣太郎が逆チョコをやると宣言していたので、樹っちゃん家で作っていたのは知っていた。そしてダビデとサエが残ってケーキを作っていたのもバネから聞いていた。
うん、そう聞いていたんだけど・・・。



「何でダビデが食べてるの?」



部室に来た私を待っていたのはチョコレートケーキを食べている彼女ちゃんと、ダビデの姿だった。ケーキには生クリームとイチゴが一つ。



「こいつが食べてもいいって。」

「あのね、それ彼女ちゃんにあげるために作ったやつでしょ?彼女ちゃんが食べる前にあんたが食べてどうすんの。」



そう言うとダビデははっとした表情をした。そんなダビデに彼女ちゃんは苦笑いを浮かべている。


「じゃあ先に、どうぞ。」

「うん・・・・美味しい。」



ケーキを一口食べてそう言った彼女ちゃん。途端にダビデの表情がぱぁっと明るくなる。
よかったねダビデ、いい彼女貰って。



「あ、ダビデは渡したんだ。」

「サエさん。」



そこでサエが部室にやってきた。手には今年も沢山のチョコの山が入った紙袋が。



「こんにちは、どうケーキ美味しい?」

「はい、とっても。」

「よかったね、ダビデ。」

「うぃ。」

「じゃあ俺も。」



サエはそう言うと私の前に小さめの箱を置いた。そして近くのイスを引っ張ってきて座ると、サエが箱を開ける。
中にはダビデが作ったケーキよりもやや小さめのチョコレートケーキが。



「はい、どうぞ。」

「え、私に?」

「うん。」



ダビデのように生クリームもイチゴものっていなかった。ただ砂糖がかかっているシンプルなもの。サエは私にも座るように促すとフォークを取り出して私に差し出した。



「君のために作ったんだ。なんてね。」

「・・・・はぁー。」



いつもの調子でそう言うサエに力が抜けた私も近くにあったイスに座った。そしてフォークを握る。
一口切ると、ダビデのフォークが横からすっと伸びてきた。私はその後手をぺちっと叩く。



「一緒に作ったんだから味変わらないでしょ。」

「そうだけど・・・・・。」

「ダービデ。」



手をさすっていたダビデにサエが一言笑顔でそう言った。笑ってはいるがこの顔は怒っている時の顔だ。あまり怒らないと周りは思っているけど印象のサエだけど、そこは幼なじみある程度の表情は分かる。しかしこの男は何で怒ってるんだ?
流石にそれをダビデも感じたらしく、小さく「ごめん」と言って自分で作ったケーキを食べ始めた。



「じゃあ・・・いただきます。」

「召し上がれ。」



チョコレートケーキはすごく美味しかった。流石樹ちゃん監修だけある。


「どう?」

「うん、美味しい。」

「よかった。」



今度はそう言うと嬉しそうに笑った。今日のサエは何とも表情がころころ変わるな、と思いながら私はケーキを食べ続けた。



「・・・サエさんの逆鱗に危うく触れる所だった。」

「え?」

「何でもない。」


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