高嶺の花とは実際に存在するのである。
私の学校で言えば白石君がそれに値する。顔も良ければ性格もいい。あのテニス部部長さんで面白い。そんな高嶺の花には勿論ファンもいっぱいいるのだ。
「まぁ、私には全然関係ない話だけどね。」
そう、所詮は高嶺の花。花は見えても取れないんじゃあ意味ない。
「蝶子ちゃんはリアリストやな。」
そう言ったのは同じクラスの小春ちゃん。心が乙女の彼もテニス部だ。白石君の事をくらりんと呼んでいる。小春ちゃんはそんな高嶺の花に近い存在なのだ。
「そうかな?イケメンは好きだよ?」
「まぁ蝶子ちゃんはくらりんよりも千歳君やもんね。」
「ちょ、小春ちゃん!!」
そう言う私に小春ちゃんはちょっと意地悪く笑った。
散々そんな事を言った私だが、やっぱり高嶺の花に魅了されているのは私も同じだった。
千歳千里君。九州からの転校生。話したことはあんまりないけど、長身と人なつっこい笑顔でファンは多い。私もその中の1人であるのだ。
「はぁ、何で彼の事好きになっちゃったんだ・・・・。」
「恋なんてそんなもんやで。勇気出してアタックしたらええやないのー。」
「無理無理、千歳君も限りなく高嶺の花に近い位置にいるじゃんか。はぁ、いっそ一氏にしておけばよかった。」
「あほ、誰がお前選ぶか。」
そう呟いた私に一氏の声が聞こえた。振り向けば思いっきり嫌な顔をした一氏の姿が。
「お前選ぶんやったらゴリラ選ぶわ。まぁ、小春が一番やけどな!」
「あら、ユウ君。」
「俺もいるばい。」
一氏の後ろから聞こえてきたその声に驚いていると、現れた姿にもっと驚いた。
「あら、千歳君やないのー。」
「久しぶりたいね。」
「お前は部活出なさすぎや。白石怒ってたで。」
「あぁ、それはやっかいばいね。」
そう言って千歳君は笑う。うわっ、近くで見るとよりかっこいい・・・・。
そう思っていると千歳君が私の方を見た!
「金色と仲よかねぇ、自分。」
「え?」
「ちょっと妬けるったい。」
「嫌やわ、千歳君。」
「せや!小春はキューピットやけどお前らのちゃうわ!」
「あら、ユウ君もやないのー。」
一氏はそう言うと千歳君の背中を押した。千歳君はあっという間に私の前にくる。え、何コレ?
というか、小春ちゃんと一氏がキューピットってどういうこと?
「じゃ、邪魔者は行きましょ、ユウ君。」
「せやな。」
「え、小春ちゃん!?」
「蝶子ちゃん。」
小春ちゃんが私の名前を呼んだかと思うと、私に顔を近づけた。
「高嶺の花は意外と簡単に手にはいるかもしれないで?」
手を振って去っていく小春ちゃんは最後に千歳君の背中を叩くと、そのまま行ってしまった。
残された私。そして千歳君。気まずくなって千歳君を見れば、ちょっと顔が赤かった。
あれ?
「あー、とりあえず座ってなんかしゃべらんね。」
そう言って笑った千歳君にただ頷くしかできなかった。
自惚れかもしれないけれど小春ちゃんが言ってたように高嶺の花は意外とすぐ手に届く所にあるのかもしれない。
2012 Birthday.
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