(曖昧ラプソディと繋がっていないようで繋がっているような佐伯)


うちの部活は兎に角イベント好きだ。子供の日はまだしも、ひな祭りまでちらし寿司を作ってみんなで食べたりもした。(女の子の日なんだけど・・・。)
勿論今日の七夕もそうである。バネとサトがどこからか笹を持ってきて部室の入り口にくくりつけた。そしてそれを見たダビデと剣太郎、そして亮までもが飾りを作りだした。
気づけば綺麗に飾り付けしてある七夕飾りが完成していた。



「へぇ、結構立派だね。」



やってきたサエが七夕飾りがしてある笹を見ながらそう言った。
サエも飾りを作っていたが、なんとも、うん・・・・微妙な出来映えになっていた。こんな顔で意外と不器用。是非ともサエのファンだと言う子達に教えてあげたい。



「あれ、みんなは?」

「先にオジイん家に行ってるってさ。」

「君はみんなと行かなかったの?」

「貴方様を待ってて差し上げたんですー。」

「そうなのかい?嬉しいなぁ。」


そう言って笑うサエは相変わらずで、私はそんな奴にサエのカバンを押し付けた。
用事があると言って抜け出したサエを置いてみんなと一緒に行こうとしたら剣太郎に「じゃあ僕達は先に行ってますんで、サエさんと一緒に来てね。」とか言われ、おまけにダビデに「頑張れ」とか言われた。何を頑張るんだ。



「ありがとう、用事も終わったし俺達も行こうか。」

「用事って生徒会?」

「そう。来週までに提出しなきゃいけない書類があってね。」



サエは生徒会副会長でもあるので実に多忙。でも本人はそれを楽しんでいるらしい。



「そうだ、短冊書いた?」

「あぁ、書いたよ。ほら。」



サエはそう言うとカバンの中から短冊を取り出して私の前に差し出した。
そこには綺麗な字で『全国大会優勝』と書かれている。



「なんか・・・普通だね。」

「あはは、みんなこんな感じじゃないの?ほら。」



既に笹に付けてある短冊には『全国制覇!』や『絶対優勝』の文字が。(ちらほら『モテたい』とか『ダジャレで大爆笑をとる』も見えるけど)



「君は何を書いたの?」

「私も一緒。あれあれ。」

「『みんなが全国大会で活躍できますように』か。流石マネージャーだね。」



サエはそう言うと笹に短冊を結びつけた。
風が吹くとさらさらと笹の葉や飾りが揺れて、綺麗だ。
部室の鍵を閉めて歩き始めると、サエがおもむろにカバンを漁り始めた。



「忘れ物?」

「違うよ、君にプレゼントがあって。」

「プレゼント?」

「あった、はいどうぞ。」



サエはそう言うと小さい袋を私の手のひらに置いた。
袋の中には色とりどりの小さな金平糖が。



「どうしたのこれ?」

「天の川から取ってきたんだ。」

「・・・・。」

「あー、ごめんごめん。さっき生徒会の子から貰ったんだ。」

「・・・・・・。」

「ん?」

「それってつまりサエにってあげたんじゃない。サエが食べなよ。」

「やきもち?」

「違う。」

「ははは、生徒会の子って言っても男からだから安心してよ。」


笑顔でそう言うサエを横目に金平糖を見つめた。天の川から取ってきたとサエは冗談で言ったけどもあながち嘘じゃないと思った。薄暗くなるにはまだ早いけどね。
袋を開くと甘い匂いがした。



「サエ。」

「何?」

「手出して。」

「ん?はい。」



差し出されたサエの手のひらに金平糖をのせた。本当に星が落ちてきたみたいだ。



「いいの?」

「元はサエが貰ったものでしょ?」

「・・・ありがとう。」



サエはそう言うと数粒を口に運んだ。
私も数粒を口に放り込む。甘くて美味しい。



「俺、もう一つお願いあったんだよね。」

「もう一つ?」

「でも叶ったから、いいかなぁ。」



何が?とは聞かなかった。私は舌の上で転がしていた金平糖をがりがり噛んだ。



「豪快だね。」

「どうも。」

「そんな君も、」

「はいはい、みんな待ってるんだから早く行くよ。」



私はそう言って歩き出す。後ろから「相変わらずだなぁ」なんて声が聞こえてきたが無視した。



「今年もゼリー作るんだろ?」

「うん、毎年作ってるからね。材料は樹っちゃんに用事してもらったし。」

「俺、毎年楽しみにしてるんだ。」

「本当に?」

「本当だよ。他のやつにあげたくないぐらい。」
「・・・・・・。」

「なんてね、冗談だよ。」



そう言ったサエはやっぱり笑顔で。立ち止まった私をよそに、サエは持っていた金平糖を私の口に放り込むと私の手を取った。



「さ、行こうか。」



返事をするよりも早く歩き出すサエ。私は放り込まれた金平糖を転がしてサエを見た。
本当にこいつは・・・・・。



「美味しい?」

「・・・からかってるでしょ?」

「そんな事ないって。」


私はため息をつくと、楽しそうなサエの手を思いっきり握り替えしてやった。



12.7.7

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