今日は樹君の誕生日だ。樹君と仲のいい佐伯君に聞いたのだから間違いない。
今日は夏休みの最終日、宿題をなんとか昨日で終わらせて前から準備をしてきた計画を実行する。そう、ちゃんと前から計画を立てていたはずだったんだ。



「なのに何で道に迷うかなぁ・・・・。」



作戦はこうだ。
テニス部の皆さんとの誕生日パーティーが終わったのを見計らって樹君の家に行きプレゼントを渡す。その為に佐伯君に樹君の家までの地図を書いてもらった。なのに、私は今絶賛迷子中なのである。



「おかしいな。さっきの道を左だったかな?」



佐伯君から貰った地図をくるくると回しながら歩く。
えっと、ここが公園のそばの信号だから・・・・。



「地図を見ながら歩くと危ないと思うのね。」



そんな私にほんわかした声が聞こえてきた。こんな優しい声は私の中で一人しかいない。



「い、樹君っ!?」

「こんにちわ、藤咲さん。」



振り返るとそこには樹君の姿が。とっさに持っていた紙袋を後ろに隠す。



「何で、樹君がここに?」

「俺は家に帰る途中なのね。そういう君は?」

「え、えっと・・・・・。」



あなたの家に行く予定でした、なんて口が裂けても言えない。
樹君は大きな紙袋を持っていた。それには紙袋いっぱいにプレゼントが見える。誰から、なんて聞かなくても分かる。テニス部の人たちだ。



「これは、部活のみんなから貰ったプレゼントなのね。」

「そうなんだ、今日誕生日だもんね。」

「知ってたの?」

「う、うん。」

「ありがとう。」



樹君を好きになって真っ先に佐伯君に聞きに行きましたとも。カレンダーに赤で丸も付けた。
そして今日ここにいるんだけど・・・・・勇気を出してプレゼントを渡さないと!



「あっ、あの、樹君!」

「はい。」

「お、お誕生日おめでとう!これ、はい!」



私はそう言って後ろに隠した紙袋を樹君に差し出した。というか、突き出したに近い。
樹君はと言うとそれを少し目を丸くさせながら見つめた。そしてゆっくりいつもの笑顔になると、持っていた紙袋を置いて私のプレゼントを受け取ってくれた。



「ありがとうなのね。あっ、よかったらお礼に家に寄ってほしいのね。」

「えっ、えぇ!?」

「家の何かご馳走しますよ。」

「いや、樹君が誕生日なんだから!ちゃんとお金払います!!」



私がそう言うと樹君はまた紙袋を持った。そして私のプレゼントはそこには入れずに歩き出す。
私は駆け足で彼の隣に来て、隣で歩き出す。
ちらりと隣を盗み見れば樹君にほんわかと優しく微笑まれた。私は急いで視線を外す。
隣でそんな笑顔を見れただけで、私の心までほんわかするからやっぱり樹君は凄いなぁ。



「来年も、そうやって祝ってくれたら嬉しいのね。」

「え?」

「何でもないのね。」



樹君はそう言うとまたほんわかした笑顔を私に向けた。





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