え?意味分からないんだけど。
完全に今の私ぽかーんて顔してると思う。というかしてる、絶対にしてる!!!
うん、とりあえず落ち着こう。ここまでの事を振り返ろう。うん。



「おい、藤咲。」

「何、宍戸?」

「考えが駄々漏れしてるぞ。」

「え!!??」



中学時に短くなった髪は数年会わない間にまた伸びていた。相変わらずさらっさら・・・・じゃなくて!!!!



「あ?」

「何でもないです!!!」

「蝶子ちゃんそのドレス超似合ってるC〜。」

「うわぁ!」



そう言って抱き着いてきたのはジロちゃん。この子も相変わらず髪ふわっふわだなー。・・・って髪しか言ってないな私。
そんな私ををよそに、宍戸がため息交じりにジロちゃんを私から引きはがした。ジロちゃんの蝶ネクタイが微妙にずれる。



「宍戸ひどいC〜!」

「お前な・・・・。」

「なんや、意外と元気そうやん。」

「はっ、誘拐犯!!!」

「・・・・人聞き悪いなぁ、自分。」



宍戸の後ろから私をここに拉致した張本人、忍足が。その隣でがっくんがニヤニヤしている。
忍足を睨みつけると、さっきの話を聞いていたらしいがっくんがやっぱりニヤニヤしながら、私に近づいてきた。



「おい蝶子、俺が説明してやるよ。」

「いや、言わんでもここまですれば分かるやろ。」

「馬鹿だな侑士、言わなきゃ分かんねーのがこいつだろ?」

「まぁ、そうやなぁ。」



・・・・・この二人後で絶対に殴る。
そんな私を見兼ねたのか、宍戸がまたため息をついた。そして腕を組む。



「お前、本当に分かんねーのか?そんな恰好までしてんのに?」

「・・・・・・・。」



宍戸がそんな恰好と言ったのは私の・・・・・・・・ウエディングドレスの事。
普通にあいつとの待ち合わせ場所にやってきたら、何故かやってきた忍足によって車に乗せられこの場所に到着。そして訳の分からないまま服を脱がされ、これを着せられ、メイクをさせられ、この部屋に押し込められた。
・・・・・こんな事できる奴、私が知っている限りでは一人しかいない。



「・・・・・・ウエディングドレスで逃げられるかな?」

「はぁ?お前まだ逃げようとしてたのかよ!?」

「諦め悪いなぁ、自分。」

「あ、諦めるとかいう問題じゃないでしょその・・・・・・結婚っていうのは・・・・・・。」



途端にこの前言われた一言がよみがえってきた。あの時は曖昧に誤魔化したけど・・・・・。
私は頭をぶんぶんと振ると、座っていた椅子から立ち上がった。



「それに、プロポーズされたんやろ?」

「俺はお似合いだと思うぜ。」

「俺もそう思うC〜。」

「まぁ、あいつと一緒になれる奴はお前しかいねぇだろ。」

「・・・・・・・・・。」



私はそう言う皆に背を向けた。
私もあいつが・・・・好きだ。好きだけど・・・・・・きっと釣り合わない。
あいつにはもっと綺麗で美人で私なんかよりももっと素直な子がきっと他にもいる。
私はドレスの裾を掴むとそのままたくし上げた。そしてくるっとまた皆の方を向く。
忍足は口笛を吹き、宍戸は赤くなり、がっくんとジロちゃんはぽかんと口を開けた。
そんな皆を見ながらドアに向かって走りだす。



「でもやっぱり、逃げる!!!」

「あっ、ちょっと待て!」

「自分、そっちは・・・・。」



走り出した私はすぐに何かに衝突した。転びはしなかったが思いっきり鼻をうった。
鼻を摩りながら視線を上に向ければそこには・・・・・・あいつがいた。



「あ、跡部・・・・・。」

「この俺様から逃げられると思ったか、あーん?」



跡部はそう言うと私の腕を掴んだ。咄嗟に払おうとしたが、びくともしない。



「ちょっと、離せ!」

「ご苦労だったな、忍足。」

「苦労したで、ほんまに。」

「みてーだな。」

「人の話を聞け!!」



跡部は忍足から視線を私に戻すとにやりと微笑んだ。
あぁ、この笑顔に何度騙されたか。



「騙したな。」

「あーん?」

「き、聞いてないんですけど、まったく!!!」

「言ってねーんだ、当たり前だろ。」



開き直りやがったこいつ!!!
重いいきり腕を振ってみるが、やっぱりびくともしない。



「し、信じられな、」

「話は後にしろ、時間がねぇ。」「はぁ?」

「結婚式に間に合わねぇだろ。」

「今から!?」



跡部はそう言うと私を抱き上げた。やっぱり抵抗しても無駄であっという間に私がいた部屋から出てしまった。



「下ろせ!!」

「いいから大人しくしてろ。」

「できるかぁ!!」

「ちっ、うるせー女だな、お前は。」



跡部は舌打ちをすると、私にキスをした。
またしてもぽかーんとなった私に跡部は続ける。



「俺がお前意外の女と結婚するわけねーだろ。」

「え?」

「お前の考えてる事なんてお見通しなんだよ。」

「・・・・・・。」

「いいか、よく聞け。」



跡部は立ち止まると、真剣な顔で私を見つめた。
その顔は私が一番好きな顔だった。



「俺の女になれ。退屈なんてさせやしねぇ。」



そして私のこめかみにキスをすると、急に涙がこみ上げてきた。
大好きな手が丁寧に涙を拭うと、むかつくから抱き着いてやった。



「た、退屈させたら忍足か宍戸と浮気してやるんだから。」

「ふん、上等だ。」
あぁもう、仕方がない。
諦めてこいつの・・・・・跡部のお嫁さんになってあげよう。
そんな言葉は絶対に言ってやらない代わりに私から跡部にキスしてやった。



+++++++
6月ですからね。


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