(曖昧ラプソディと繋がっていないようで繋がっているような佐伯)「あれ?」
図書館に本を返し終えた後、道端でばったりでくわしたのは意外な人物だった。
「青学の、不二君?」
「こんにちわ。」
青学テニス部の不二君。サエの幼なじみらしい。そんな彼がなぜここに?不二君は爽やかに微笑むとくすりと笑った。
「どうしたの、こんな所に?」
「手塚と一緒に練習試合の打ち合わせに来たんだ。」
「練習試合?」
「あれ、君は聞いてなかったの?」
「聞いてない、聞いてない。」
「佐伯からメール貰ったんだけどな。ほら。」
不二君はそう言いながらポケットから取り出したケータイを私に見せてくれた。
確かに文面には『練習試合の提案』と書かれている。いやいや、私マネージャーなんだけど。これに感して何も聞いてないんだけど。
「はぁー、きっと剣太郎辺りが言い出したんだな・・・・ごめんね、不二君。」
「手塚もお互いに実りのあるものにしたい、って案外乗り気だったから。」
「それならいいんだけど・・・・ってあれ?その手塚君は?」
「あぁ、手塚ならそっちの部長、葵君だっけ?彼に誘われて釣りに行ったよ。」
「・・・・重ね重ねすみません。」
「気にしないでよ。手塚も喜んでたみたいだし。」
そう言って笑う不二君に、なんとも申し訳なくなった。まったくうちの部員は・・・・。
「手塚君が釣りしてる間、不二君はどうするの?」
「佐伯と久々にゆっくり話そうと思ってね。待ち合わせしてたんだ。」
「なる程。」
不二君はそう言うと私の顔を見つめて、またくすりと笑った。
「ところで、どう?」
「何が?」
「佐伯とは付き合い始めた?」
「は?」
いきなり何を言い出すんだこの人は?
不二君はまた面白そうにくすりと笑う。
「あれ、違った?」
「違うもなにも、私とサエはただの幼なじみです。」
「そうなの?」
「そうなの。」
「佐伯は君の話しかしないから、そうなのかなと思って。」
そうだ、さらっとそう言う不二君はサエと同じ属性だった。
ため息をつくと、さらさらの不二君の髪が風に揺れる。
「本当に付き合ってないの?」
「そう言ったでしょ?」
「なら、俺にもチャンスはあるかな?」
「え?」
「こらこら、不二。」
不二君の後ろからサエがやってきた。口は笑っているが、目が笑っていない。
「やぁ、佐伯。」
「彼女は俺のだからダメだ。」
サエはさらっとそう言った。いや、俺のって何だよ。
「残念だな、折角彼女をデートに誘おうと思ったのに。」
「で、デート?」
「デートは俺がする予定だから。」
「そっか。」
2人で何故か笑いあっているが、2人で私をからかっている事だけはわかる。
「サエ。」
「何?」
「練習試合の事、後でゆっくり聞かせていただきますからね。」
「君からのデートのお誘い?」
「違う!」
「本当に仲いいんだね。」
今度は声を上げて笑い出した不二君に、サエは困った表情一つしていない。いや、むしろ困っているのは私の方だけども。
やっぱりこの2人はつくづく同じ属性なのだとため息をつきながら感じた。
12.4.30
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