ふと、なぜだが中学校の頃を思い出した。
本棚の端っこの方にしまいこんでいた卒業アルバムを引っ張り出して、少し埃にまみれたそれを開く。
懐かしい、あの頃がそこにはあった。もう何年も前の事だけど今でも鮮明に思い出せた自分にびっくりした。
「何やってるんですか?」
呆れたようなそんな声が聞こえて振り返れば、観月が声と同じように呆れた様子で立っていた。
シャツの上から私の薄紫のエプロンをしている観月の姿を見てそう言えば掃除の真っ最中だという事に気が付いた。
「ほうきを取ってくると言って一向に帰ってこないと思ったら、こんな所で油を売っていたとは。」
「ごめんごめん、つい。」
「はー、掃除をすると言ったのは貴女でしょう。」
ため息混じりにそう言った観月は私の隣に膝をついた。そして私の見ていた卒アルを覗き込む。
「・・・・・ずいぶんと懐かしい物を見ていますね。」
「なんか急に思い出して。」
「卒業アルバムを?」
「ううん、中学の時の事。」
ページをめくると一人ひとりの写真が現れた。その中にあの頃の観月の姿を発見。
「あ、観月いるよ。若ーい。」
「そうでしょう、あれから何年たったと思ってるんですか?」
「でも髪いじる癖は変わってないよね。」
「貴女も、気になる事があると他の事はそっちのけになるのは、あの頃から変わっていませんね。」
「観月に言われたくない。」
「私も貴女には言われたくありませんね。」
お互いがお互いの言葉にムッとすっるが、直ぐにどちらともなく噴出した。
微笑む横顔はあの頃よりも大人びていた。
「あっ、テニス部の写真あるよ。」
「おや、本当ですね。」
「懐かしいなー。」
「懐かしいって・・・・・この前彼らには会ったばかりでしょう?」
「そうだっけ?」
「そうです。それに、明日になれば嫌でも会えますよ。」
そう言って無理やり卒アルを閉じた観月は近くのカレンダーに視線を向けた。
そこには明日の日付に赤い丸が何重にも書かれている。
「さ、休憩は終わりです。」
「えー。」
「えーじゃない。」
「今日中に終わらなかったら?」
「今日中に終わらせるんです。もう少ししたら、僕が紅茶でも淹れますから。」
観月はそう言うと立ち上がり、卒アルをもと会った本棚の端っこに戻した。
そして私が持っていくはずだったほうきを私に差し出す。
「・・・・観月って、いい奥さんになると思う。」
「そうなったら、かかあ天下にして差し上げましょう。」
「や、やっぱり今のはなし!!」
そう言った私に観月はくすくす笑った。そんな笑いを見て明日木更津辺りに同じように笑われるんだなーと思ってしまった。
「本当に、貴女は変わっていませんね。」
そう呟くと観月はそんな事を考えている私の腰に手を回した。
そして変わらない瞳で私を見つめる。
「頑張ってください、奥様。」
「が、頑張りますとも、旦那様。」
そう言うと観月は私のおでこにキスをした。
++++++++++
観月、ですよ。
薄紫のエプロンってのがポイント。
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