(曖昧ラプソディと繋がっていないようで繋がっているような佐伯)


3月3日はひな祭りだ。ひな祭りと言えども部活はある。いつものようにマネージャーとしての仕事をこなしていると、ダビデにひなあられを貰った。(何で持ってるんだ。)



「ちょっと寄り道しないか?」



サエと帰る事が日常になってきたなんて思っていると、サエがいつものように笑ってそう言った。
返事をする前に手を掴まれてそのまま足早に歩きだす。転ばないようにその早さについて歩けばついた所は近くの公園だった。



「サエ、寄り道ってここ?」

「今日、ひな祭りだろ?」



それと何が関係が?
と思っていたらサエが立ち止まる。急に立ち止まったサエの背中にぶつかった。地味に痛い。
鼻をさすりながら、振り返ったサエが指差す先を見る。



「梅だ。」



小さなピンク色の梅の花がぽつぽつと咲いていた。



「この前ここに寄ったら咲いてるのを見つけたんだ。」

「可愛い・・・。」



寒い寒いと思ってたけど、春が確実に近づいているんだなと感じた。
サエを見れば小さな蕾に手を伸ばしていた。そんな姿も様になっている。



「そうだ。」

「ん?」

「ダビデにひなあられ貰ったんだ。」



鞄の中からダビデから貰ったひなあられの小袋を取り出す。封を開ければ色鮮やかで甘いにおいがした。



「食べる?」

「いいのかい?」

「うん。あそこのベンチ行こう。」



すぐそばのベンチに2人座り、梅を眺めた。ちょっと早いお花見だ。
サエがハンカチを取り出して手の上に置くとひなあられをのせた。



「どうぞ。」

「ありがとう。」



ひとつ取って口に運ぶと、甘さが広がる。
サエも口に運ぶと、手の上に置いていたひなあられがのったハンカチを2人の間に置いた。



「サエってさ、優しいよね。」

「唐突だね。」

「なんて言うのかな、紳士的?」

「そう?」

「そうそう。」



私がそう言ってひなあられを数個取って口に放り込んだ。
ばりぼり食べてる私を見ながら、サエが声を上げて笑った。



「そっか、君にはそう見えてるんだ。」



サエもそう言うとひなあられを数個取った。
そして何を思ったかピンクのひなあられを私の口に放り込んだ。
驚く私にサエが顔を近づける。



「君だけだよ。」

「え?」

「特別優しくしてるのは、君だけだって言ったんだ。」



柔らかく目を細めてそう言うと、そのままサエは私のおでこにキスをした。
持っていたひなあられが落ちる。



「・・・・な、な、何して。」

「小さい頃はよくしてただろ?」

「小さい頃はでしょ!?」

「あははは、怒った顔も可愛いよ。あの梅みたい。」



そう言うサエの顔は楽しそうだった。そんなサエの胸を押すと、立ち上がる。
また声を上げて笑うサエをよそに私はまた梅を見た。大きくなる蕾はまるで私の心みたいだと思った。



「もう、帰るよ!」

「残念だなぁ、もう少し君と一緒にいたかったのに。」

「はいはい。」



私はひなあられの最後のひとつを取ると口に入れた。



12.3.3


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