大好きな背中を見つけた。
今日の卒業式の壇上で見た宍戸先輩のその背中はいつもよりも遠く見えた。
声をかけようとして止める。宍戸先輩の前には女子が一人いて赤い顔をしていた。彼女は頭を下げると足早に立ち去る。
そんな彼女の胸には卒業生の赤いリボンがあって告白をしたのだと理解した。
宍戸先輩は頭をかきながらくるりとこちらを向くと私に気づいたのかこちらにやってきた。
「よぉ、他の奴らの所に行ったんじゃなかったのか?」
「先輩の姿が、見えて・・・。」
「そうか。」
宍戸先輩はそう言うと「あー」と言葉を濁すと視線を逸らした。
「お前もしかして、今の見てたか?」
「・・・・すみません。」
「いや、別に謝らなくてもいいけどよ。」
宍戸先輩はそう言うといつものように私の頭をぽんぽんとした。
私が一目惚れして、鳳君に協力してもらって話せるまでになり、ようやく最近一緒に帰れるまでになった。
最初はタオルを渡したら睨まれたりしていたが、レギュラーに復帰してからは優しく笑いかけてくれるようになった。
そんな先輩の胸に揺れる赤いリボンを見て本当に卒業してしまうんだなと実感する。
「卒業、おめでとうございます。」
「おぉ、サンキュー。」
「高等部行っても、テニス頑張ってください。」
「あぁ、勿論だ。」
そう言って笑う宍戸先輩の姿に泣きそうになった。私も高等部に進むつもりだが、一年は・・・・・長すぎる。
「何て顔してんだよ。」
宍戸先輩はそう言うと今度は乱暴に私の頭を撫でた。
私は高等部に行ったら今以上にモテモテになるんだろうな。そんな事を考えながら先輩の制服の裾をつかんだら急に涙が溢れてきた。
「先輩・・・・。」
「あー、泣くなって。俺が泣かせたみたいじゃねーか。」
「宍戸先輩。」
「何だ?」
「私もっと美味しいチーズサンド作れるようになります。」
「は?」
「もっとテニスできるようになります。」
「あぁ・・・・。」
「もっともっと、先輩が好きになってくれるように可愛くなります。」
「・・・・・。」
「だから・・・。」
一気に喋ったので息切れた。そして気づく、これじゃぁ告白したのと一緒だ。
裾を握る手に力をこめれば、ますます涙が流れた。
「だから一年、待っててくれますか?」
好きとは言えなかったけど、気持ちを宍戸先輩に伝える事ができた。と思う。
すると頭に置いてあった手が離れてでこぴんされた。
驚いて顔を上げれば、制服をつかんでいた手を先輩にはがされた。そして優しく包まれる。
宍戸先輩の顔は・・・・赤かった。
「本当に、恥ずかしい奴だなお前。」
「・・・・すみません。」
「まぁそんな所も俺は好きだけどよ。」
「すっ・・・・。」
私が言えなかった言葉をいとも簡単に言った宍戸先輩にますます驚いた。
先輩は赤い顔でいつものように笑うとまた私の頭を撫でた。
「しゃーねーな、待っててやるよ。」
「・・・・そっ、それって。」
「浮気するなよ?」
「しっ、しません!絶対しません!」
先輩はそう言うと声を上げて笑った。
そんな宍戸先輩の手を握り返せば、先輩も握り返してくれた。
待ってて下さい。絶対に一年後は好きって伝えますから。
涙を拭いながら隣で笑う大好きな人に誓った。
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非似ですな。orz