「ゆ、指輪をもらった・・・・。」



いきなり呼び出されたと思ったら、小学校からの腐れ縁の蝶子は神妙な顔つきで俺にそう言った。
注文したビールを手にしている蝶子の話が突拍子もないのは今に始まった事ではない。小学校の頃から「蝶子は主語がなさすぎなのね」といつも樹っちゃんに言われていた。
しかし今のこの蝶子の言葉に今回だけは思い当たる節があった。



「た、誕生日プレゼントだって・・・・。」



そう言って蝶子は机の上に小さな箱を取り出した。それの中身がその指輪だって事は見ないでも分かる。そしてそれを贈った相手も。



「バネからだろ?」

「何で分かった!!??」



俺は何も言わずに注文したウーロン茶を一口飲むと、急におろおろし始めた蝶子と指輪の箱を交互に見つめた。
言わなくても分かるって、俺はバネとも腐れ縁なんだから。
数日前にバネと飲んだ時、あいつも蝶子とまったく同じ反応をしていたのを思い出した。



「嫌だったの、指輪。」

「ち、違うよ!!その、いきなりで、びっくりして・・・。」

「ふーん。」

「これは、その、あれかな?」

「あれ?」

「・・・・・友好の証、みたいな感じかな?」



ガタっ。
思わずウーロン茶のグラスを落としそうになって、慌てて机の上に戻した。
・・・・・突拍子もないのもここまで来ると達が悪い。頭を抱えたくなる。
俺は小さくため息を付いた。



「友好ってだけで、男は女性にアクセサリーは贈らないよ。」

「え、違うの?じゃぁ何?星の数ほどアクセサリーを贈っているであろう佐伯さん?あ、相手を束縛したい時とか??あ、でもそれはサエだけ・・・。」

「・・・いろいろ言いたい事はあるけど、むしろ愛情の証、なんじゃない?」

「・・・・・・・。」



この前バネと飲んだ時、やけに蝶子の事を聞かれた。相談というよりも尋問だ。これも今に始まった事じゃない。中学校の頃からずっと・・・ずっと二人は両想いだ。二人がそれに気づかないまま・・・だらだらとここまで来ているのだから。
今度は蝶子にも聞こえるように大きくため息を付くと、また神妙な顔つきになった蝶子に指輪の入っている箱を指でとんとんとつついた。



「簡単に、蝶子が好きって事じゃないの?」

「それって・・・・・プロポーズって、事?」

「・・・・・また、突拍子もない・・・・はぁ。」



顔を赤くさせながらそう言った蝶子を見ながら、俺はウーロン茶を飲み干した。


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