「えぇか、蝶子。いい感じな所で『お誕生日おめでとう!』って大きめに言うんやで?それ合図に俺ら入ってくから。」



そう言った白石の向こうで『ドッキリ大成功★』のプレートを持ったラブルスが。わざわざそんなのまで作ったのか。その隣からグッと親指を立てている謙也と、寒そうにマフラーに顔を埋める財前君。
千歳の誕生日に何故か私が寝起きドッキリの仕掛け人に大抜擢された。服はメイド服になる予定だったが、私が猛反対をしたので、小春ちゃんコーディネートの服に変更になった。そして首には赤いリボンのチョーカー。ユウ君のお手製だ。小春ちゃん曰くの千歳の好みの格好をして寮の千歳の部屋の前に立ち尽くす。

作戦はこうだ。
この姿で寝ているであろう千歳の部屋に侵入し、白石から(いやいや)教わった誘惑方で千歳を起こす。驚きながら起きるであろう千歳に大きめな声で『誕生日おめでとう!』を告げると、外でスタンバイをしているみんなも部屋に入ってきて・・・・・誕生日ドッキリ大成功、という感じだ。
そのために白石と謙也が昨日の夕方から千歳をふらつかせないために部屋に半ば閉じ込めたという。

ドアノブを回すと簡単にドアが開いた。千歳は滅多に鍵をかけない。私や白石にそれについてお説教されてもまだ治らないんだから、呆れてしまう。泥棒とか入ったらどうするんだよ。
そして千歳の部屋に入る千歳の部屋は物が極端に少ない。生活感がない部屋はテレビと小さい冷蔵庫とこたつ。そして布団。布団が規則正しく上下しているのが見える。布団から足が出てるのは千歳がでかいからだ。



「千歳ー。」



近づいて小さく名前を呼ぶが、反応なし。念のため顔をのぞき込んでみたが枕に顔を埋める千歳は何とも気持ち良さそうに眠っていた。
はぁ。私はため息を付くと作戦に取り掛かる。本当は嫌だけど結局プレゼントも用意しそこなってしまったので仕方がない。
私はスカートを少したくし上げると、布団の上から千歳に跨ろうとした。
が。



「そげな格好で、何しとうと蝶子?」



声がしたかと思ったら右手首を思いっきり掴まれた。そして反転する視界。我にかえればぼんやり見える天井と、私に覆いかぶさる千歳がいた。これは流行り床ドンというやつだ。まぁ正確には床ではなく布団の上なんだけど。



「お、お、起きてたの?」

「・・・・・赤いリボン・・・。」

「へ?チョーカーの事?」

「昨日白石達が言うてたのは、これんこつか・・・・。」


話が見えないまま千歳は私のチョーカーを、というか私の首をなぞる。ってか何の話を千歳にしたんだよ白石?
そう思ったのもつかの間、千歳の大きな手が私の頭の後ろに回った。一気に近くなった距離に驚く暇もなく、唇にキスされた。しかもリップ音付きで。



「ち、ちと、」

「嬉しかばってん、今まで我慢しとったから止まらんくなりそうたい。」



そう言ってまたキスする千歳。初めてに近いこんな甘ったるい雰囲気に、私はパニックになり急いで顔を背けて千歳の厚い胸板を押す。そうだ、作戦を実行しなければ。



「千歳、お誕生日おめでとう!」

「ん、ありがとう。」

「・・・あれ?千歳、お誕生日おめでとうございます!!」

「はは、そないに大きな声で言わんでも聞こえとうよ。ありがとう。」



そうじゃなくて!!!何でみんな来ないの!?合図はこれだって白石がさっき言ったんじゃん!!!また何度も重なる唇に、涙目になる。正直嬉しいけど、嬉しいけど何でみんなのりこんで来ないの!?



「白石達なら来んよ。」



私の考えを読んだようにキスの合間に千歳が囁く。ぼやけて見える千歳の表情は普段のほんわかしたものとは違って、鋭く妖艶に見える。



「俺にくれる誕生日プレゼントは赤いリボンち言うとったったい。」

「赤いリボンって、あ、チョーカー?これ?」

「おそらくな。最初からそんつもりでお前さんに付けさせたとよ。」

「・・・。」

「それに、ほれ。」



千歳はそう言うと私に小さい紙切れを、私に見せてきた。
『誕生日プレゼント、赤いリボンで用意したから堪能してや☆』
・・・堪能って、か、完全にハメられたんだ、私?!
千歳は紙切れを仕舞うと楽しそうに微笑んだ。そして太ももに手を這わされ、背筋がゾクゾクする。



「ち、千歳・・・。」

「名前で呼んでくれんね。」

「・・・千里、んっ。」



またキスされる。食べられるようなキスに頭の芯かぼんやりしてくる。このまま流されて・・・・。


「千歳ぇーー!!」

「あぁ、金ちゃんアカン!!」



バーンと開いたドアから誰かがやってきた。金ちゃんだ。



「千歳、誕生日・・・あり、ねーちゃんも一緒やったんか?」

「きーんーたーろー?」

「げげ、白石っ?!」



千歳が私から唇を離すと、私を抱き抱えるように起き上がらせた。見れば白石が包帯を解いて金ちゃんに迫っていた。金ちゃんは涙目だ。
その横から謙也と財前君がやってきた。



「すまん千歳。金ちゃん止められんくて。」

「ほんますんません。ええ所だったのに。」

「そうたいね。」



ニヤニヤしながら言った財前君に、千歳は苦笑いをした。申し訳なさそうに眉を下げた謙也の後ろからユウ君と小春ちゃんが『ドッキリ大成功★』のプレートを掲げている。



「ドッキリだったと?」

「プレゼントはほんまやでぇ。」

「・・・・仕切り直しや!千歳!」



白石が向き直ってそう言うと、謙也と財前君がどこからクラッカーを取り出して鳴らす。音だけクラッカーだ。



「「「誕生日おめでとう!!」」」

「・・・ありがとう。」



千歳は照れたようにそう言うと、頭をかいた。そして私の方を見ると、顔を近づける。



「・・・続きは後で、な。」

「!?!?」



その言葉に口をぱくぱくさせる私に、財前君のスマホからピロリーンと電子音が鳴った。


2014.12.31.Happy Birthday!

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -