「なぁ、自分て猫派やったっけ?犬派やったっけ?」
下校途中白石君にそう言われた。
「え、どっちも好きだよ?特にどっちって言うのは・・・。」
「なら、蝶子を猫派にしたるわ。めろめろやで。」
ウインクしながらそう言った白石君につられ、彼の家にやってきた。初めての白石家、そして初めての白石君の部屋。ドキドキする私に白石君は白い猫を差し出した。
「か、可愛い!」
「俺ん家の猫や、可愛えぇやろ?」
「うん、すんごく!」
人なつっこいのか、膝の上に下ろすと猫ちゃんは私の体にすり寄ってきた。白い毛並みのいい猫ちゃんは、私を見上げて綺麗な声で「にゃー」と鳴いた。可愛い。
「猫じゃらしいるか?」
「ください!」
白石君から猫じゃらしを受け取る。紐の先にピンクの小さいポンポンが付いている。目の前に垂らしてゆらゆらと揺らすと、猫ちゃんは私の膝から降りて猫じゃらしに猫パンチをする。
「すごいすごい。」
「せやろ、可愛えぇやろ?」
「うん!あ、撫でてもいい?」
「勿論や。」
白石君は笑って私から猫じゃらしを取ると、また猫ちゃんを私の膝に置いた。
見上げる猫ちゃんの頭を優しく撫でる。嬉しそうに目を細める猫ちゃん。可愛い、すごく可愛い。
そんな私を見ながら白石君が私の隣にやってきた。
「楽しいか?」
「うん、すごく!」
「・・・そろそろ俺も撫でたなったわ。」
「あ、ごめん白石君。猫ちゃん独占しちゃって。」
「えぇて、俺も俺なりに楽しむから。」
白石君はそう言うと悪戯っぽく笑った。そして何故か私の頭に手をのせて撫でる。
何かちょっと嫌な予感がしたが、遅かった。白石君はそのまま優しく私の頭を撫でていた手を私の頬に滑らせた。やわやわと優しく撫でるようにして私の顎をすくう。
「し、白石君・・・。」
「ここも撫でると気持ちええんやで?」
白石君の怪しく目が細くなって、今度は私の喉の辺りをやわやわと優しく撫でる。恥ずかしさと心地よさに口をパクパクさせると、白石君の綺麗な顔が近づいてきた。
「な、めろめろやろ?」
耳元で甘くそう言った白石君に、力が抜けてしまい彼の肩にもたれかかる。
白石君は手を私の顎から頭の後ろに回わすと、声をあげて笑う。
「可愛えぇな、蝶子。」
「・・・私は猫ちゃんじゃないです。」
「そりゃな、こいつより絶頂や。」
白石君はそう言って持っていた猫じゃらしを私の膝にいる猫ちゃんに向けて数回振ると、部屋の隅にぽーんと投げてしまった。猫ちゃんは素早く私の膝から降りてそれを追いかける。
「あっ、いいの猫ちゃん。」
「えぇて、俺も俺なりに遊ぶ言うたやろ?」
そう言い終わらないうちに白石君は私にキスをした。
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