部屋を片付けていたら中学の時の修学旅行の写真が出てきた。パラパラ見ているとある事に気づく。その後出てきた、卒業式の写真をまた見る。またしてもある事に気づく。
私はこの事実を中学校からの友達、白石に相談する事にした。



「どないしたん、深刻な顔して。」

「謙也の写真が・・・ことごとくブレてる。」

「は?」

「私の持ってる写真の謙也はことごとくまともに写ってる写真がないの。」

「謙也さん、呪われとんのちゃいますか?」



白石の横にいた財前君がカシスオレンジに手を伸ばしながらスマホをいじる。白石はそんな財前君からカシスオレンジを奪って烏龍茶を差し出す。


「未成年なんやから、酒はアカンで財前。」

「未成年って、数ヶ月しか違わないやないっすか。」

「数ヶ月でもアカン。」

「とりあえず2人とも真面目に聞いてよ。」



舌打ちして渋々烏龍茶に口をつけた財前君はスマホをからようやく視線を上げた。
白石は財前君から奪ったカシスオレンジを私のワインと交換した。



「デートの時取ったのも含めてまともな写真がほとんどないの。」

「まぁ、じっとしてんのが苦手な奴やしなあいつ。」

「今に始まった事ちゃいます。」

「だとしても!この前友達に比較的まともに写ってる謙也との写真見せた時に『あんたの彼氏ふ○っしーの中の人なん?』って言われた私の気持ちも考えてくれ。」



その言葉に2人が同時に吹き出した。
ブレてない謙也の写真は何枚か存在するが、どれもこれも小さかったり見切れていたりする。後は卒アルの写真ぐらい。(とても少ないけれど)
本当に笑い事じゃないんだよ。私だってこう、自慢の彼氏との写真を部屋に飾ったりしたいんだから。
涙目になりながら私が頼んだワインに口をつけた白石の足を蹴る。笑いをこらえながら「すまんすまん」と言った言葉はまったく説得力がない。



「ようは謙也と一緒にちゃんとした写真撮りたいっちゅー事やろ?」

「そう、だけと・・・・。」

「そんなら簡単や、なぁ財前?」

「まぁ、そうっすね。」

「え?どうやって?」

「例えば・・・・。」



白石はと少し小さい声で続けると、ようやく笑いが収まったらしい財前君も「ヘタレっすから」と続けた。
・・・・そんな事でちゃんとした写真が撮れるのか?



「すまん、遅れた!!」



そう思いながら私がカシスオレンジにまた口をつけると、ようやく謙也が現れた。謙也は私の隣に座ると上着を脱ぐ。
そして前にいた財前君を見てぽかんと口をひらく。



「お前珍しいな、烏龍茶やなんて。」

「蝶子さんに取られたんすわ。」

「取ってない取ってない!取られのはむしろ私だから、白石にワイン取られた!」

「自分酒癖悪いんやからそれぐらいで丁度えぇやろ?なぁ、謙也?」

「あははは、確かにそうやな!」

「何だとぉ!」



笑いながらビールを注文する謙也の横顔を見て、私はちょっとした仕返しにさっき白石に言われた事を実行に移す事にした。



「えぃっ!」

「わっ、な、何やねん急に!?」



私は謙也の首に腕を回して抱きついた。途端に強張る謙也の体。顔もみるみるうちに赤くなるのが分かった。



「蝶子お、お前、もう酔ってるんか?」

「・・・・財前君。」

「・・・・・しゃーないっすわ。」



財前君がそう言ってとスマホを向けると、ピロ〜ンと電子音。その音は写真を撮った時の音だ。



「ちょっ、財前、何勝手に撮ってんねん!!」

「えぇやんか謙也、蝶子とのツーショット写真くらい。」

「べ、別にツーショットが嫌やっちゅー事やなくてこ、こないな格好で・・・・。」

「謙也、可愛い・・・・。」

「か、可愛い言うな!!」



本当に白石が言った通りにしたら成功した。白石はまたクスクスと笑っている。真っ赤な顔でそう言う謙也もまたまったく説得力がなかった。
その後ちゃんと説明してちゃんとしたツーショットを財前君に撮ってもらった。データも送ってもらったから、これでゆるキャラの中の人じゃなくちゃんと彼氏と紹介ができそうだ。
後日、プリントアウトしたその写真はお気に入りの写真立てに入れて部屋に飾った。
「なんやめっちゃ恥ずかしい」って言う謙也に私はまた抱きついた。


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