今日はバネさんこと黒羽春風の誕生日である。用事を済ませて近所のバネさんの家に向かうと、弟君がお出迎え。



「こんにちわ。バネさんいる?」

「兄ちゃんなら2階にいるよ。あがって。」



弟君はバネさんに似て可愛い。そして彼もテニスをやっている。そんな弟君に言われて家にお邪魔する。おばさん達はお出かけしているらしい。



「いつもみたいに勝手に入っちゃっていーよ。兄ちゃんも怒んないと思うし。」

「じゃぁ遠慮なくそうさせてもらうね。」

「うん。ついでに夕飯も食べてく?」

「そうやって私に作らせようとしてるでしょ?」

「ばれたかー。」



そう言って笑うので、頭を撫でる。そして弟君はまたリビングに戻るのを見送ると階段を上ってバネさんの部屋を目指した。
自慢じゃないけど、バネさんの彼女に昇格してもうすぐ一か月になる。幼馴染の延長線なので彼氏彼女になってもあんまり関係としては変わってはいないけれど、今日は誕生日。午前中にテニス部のみんなでやった誕生日会で渡したタオル。端っこにこっそりハートの刺繍をしてある。本人に言ってないので気づいているかは微妙。うん、たぶん気づいてないと思う。
一応ドアをノックするが返事はない。恐る恐るドアノブを回して開けば、部屋の主はベットの上で爆睡していた。



「バネさん入るよー。」



勿論返事はない。静かにドアを閉めてベットに近づけば、あおむけに大の字で寝ている姿があった。タンクトップのままだし、お腹出てるし、確実にこのままだと風邪を引く気がする。私はとりあえず近くにあったパーカーを手にすると、出しっぱなしのお腹の上に掛けてあげた。
そして気づく、バネさんが首から下げているあるもの。



「・・・・さっきあげた、タオル・・・。」



寝ているバネさんの首には、さっき私が上げたタオルが。しかも端っこに刺繍したハートの上に手が置かれている。私の気持ちにかれこれ5年も気づかなかったあの鈍いバネさんが、このハートに気づいた!?
思わず嬉しくなった私は、そのまま寝ている彼の上にのっかった。



「うおっ!?」



流石にそれに驚いたのか、バネさんが目を覚ました。私はポカンとしているバネさんの首に腕を回して抱き着くと、彼が私をさりげなく支えながらゆっくり起き上がった。



「・・・お前な、仮にも女が、寝てる男にいきなり飛びつくなよ。」

「バネさんだからいいの!」

「・・・・まぁいいか。」



そうやって頭をぽんぽんとしてくれるバネさんが大好きだ。そんなバネさんの首から私のあげたタオルがぽとと、私の膝の上に落ちた。私はそれを拾うと、ハートの刺繍をバネさんに見せた。



「これ、気づいてくれたんだ。」

「ん、何だそれ。そんな模様あったのか。」

「・・・・・・・・・。」

「でもよかったぜ、丁度新しいの買おうか迷ってた所だったんだ。ありがとな。」

「・・・・・・・・・・・。」



・・・やっぱり鈍い。想定内だったと言えば想定内だったけど、嬉しそうなその笑顔が見れたからよしとしよう。私は、タオルをまたバネさんの首にかけると大きな胸に顔を付けた。あったかい、優しい大好きな鼓動が聞こえてくる。



「誕生日おめでとう。」

「ありがとな、蝶子。」



バネさんは私が大好きな笑顔でそう言うと、私の頭を乱暴に撫でた。



「夕飯食ってくんだろ?」

「そうやって私に作らせようとしてるでしょ?」

「ばれたか。」

「本当に兄弟一緒なんだから。」

「は?」

「何でもない!」



仕方がない、おばさんが帰ってくるまで夕飯の手伝いをしてあげよう。ついでにデザートなんか作ってあげたら、二人とも喜ぶかな?


2013 Birthday.

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