「何やこれ。」



俺の部屋にやってきたユウジが机の上に置いてあったボールペンを見てそう言った。



「キャラもんのボールペン。なんや白石、お前こんなきしょい趣味やったか?」

「あぁそれ。蝶子のや蝶子の。」



キャラクターのイラストが散りばめられたボールペン。これは俺のやなくて蝶子のもの。
彼女は俺の想い人でもあり、クラスメイトでもあった。



「この前2人で勉強会やった時のやな。」

「はーん、忘れもんか。」

「ちゃうで。」

「は?」

「俺が筆箱から抜き取ったんや。」



俺の言葉にユウジの表情が一瞬硬くなった。しかしほんの一瞬だったので端から見たら分からんやろな。



「お前にしては珍しく無駄な事したな。そんなん盗んでどないすんねん。」

「盗んだんやない。ちゃんと後で返すわ。」

「はぁ?意味分からん。」

「そうすればまた俺ん家に来てくれるやろ?」

「・・・・・。」



俺がそう言うとユウジは今度は誰にでも分かるぐらいはっきりと俺を睨みつけた。やがて綺麗に唇の端をつり上げる。



「やっぱり無駄や。まぁ、ストーカーで訴えられんよう気ぃつける事やな。」

「訴えられるなら窃盗やろ?ストーカーちゃうわ、どっちかっいうたらお前やろ。」

「あほ、お前のが質悪いわ。」



ユウジはそう言うとキャラもんのボールペンを机の上に戻した。
蝶子がこれを気に入って使っているのは前から知っとった。何でかって?そりゃいつも彼女を見てるから。
きっと明日学校に行ったら蝶子に声をかけられる。そしたらこう言うんや。「自分、あのボールペン忘れていったやろ?」って。


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