(曖昧ラプソディと繋がっていないようで繋がっているような佐伯) 大晦日、もうすぐ年越しだと思いながらベッドにダイブすれば枕元に置いたケータイが震えた。
「もしもし。」
『もしもし、俺だよ。』
襲ってきた眠気が電話越しの声で吹き飛んだ。
「・・・俺俺詐欺なら切ります。」
『あぁ、切らないで俺だよ、佐伯。』
「・・・・・。」
声で分かってはいたが、電話の向こうはサエだった。
「どうしたの、サエ。」
『もしかして、寝てた?』
「いや、まだ寝てないよ。」
『そっか、よかった。君の声が聞きたくなってね。』
・・・・またそう言う事を。サエに聞こえないようにため息を付く。
サエはいつもこうだ。電話の向こうできっと私をからかってるに違いない。
「・・・・またそう言う事を。」
『本気なんだけどな。』
「はいはい。で、何か用事あったんじゃないの?」
『明日の初詣の話、聞いてる?』
「みんなで行こう!って剣太郎からメールきた。」
『今年も着物は?』
「着るつもりではいるけど・・・・。」
『なら俺が迎えに行くよ。ねっ。』
私はいつも初詣には着物を着ていく。母親が着せたがるのと、みんなに意外と好評だったから。特にサエと剣太郎には好評だったな。
ねっ、なんて・・・・・電話の向こうで彼はきっと微笑んでいるに違いない。
「・・・・分かったよ。」
『あっ。』
「ん?」
『明けましておめでとう。』
サエにそう言われてはっとした。近くにある時計を見ればいつの間にか0時を過ぎていた。
「おっ、おめでとう。」
『今年も一番に君の声を聞けてよかったよ。』
「なっ!!」
『今年もよろしくね。』
そう言えば去年もこの時間サエと話していたような気がする。
そう考えていつものようにさらっとそう言うサエに、今年も私はかなわないんだと思った。
12.1.1
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