「あっ。」
「あっ。」
新しい年がやってきた。
いつものように神社に初詣にやってきた。
そうしたら、人ごみの中で天根君と遭遇。
「・・・・明けまして、おめでとう。」
「・・・・おめでとう。」
お互い驚いたようにそう言うと、天根君の後ろからひょこっと佐伯先輩が現れた。
「明けましておめでとうございます。」
「おめでとう。君も来てたんだね。」
そう言って笑う佐伯先輩は今年も変わらず男前だ。
そんな先輩に頭を下げると、前から来た人の肩にぶつかる。よろけた私を天根君の逞しい腕が支えてくれた。
「ありがとう。」
「大丈夫か?」
「うん。」
私はお礼を言って天根君から離れると、何故か頭を撫でられた。
そんな天根君と私を見てか、佐伯先輩が楽しそうに笑う。
「相変わらず、仲いいね。」
「そう?」
「うん、とっても。」
「・・・・・・・・。」
「仲いいついでに、一緒に初詣でに行って来たら?」
「え、でも・・・・。」
「みんなには俺から伝えて置くから。」
「頼んだ。」
「え?」
「それじゃ。」
佐伯先輩はそう言いながら手を振ると、そのまま人ごみの中に消えて行った。
その背中が見えなくなってから隣の天根君を見上げれば、彼もこっちを見ていたようで視線がぶつかる。平常心を装いながら私は急いで言葉を探す。
「あの、よかったの?」
「何がだ?」
「その、みなさんと一緒に初詣で行く予定だったんでしょ?」
「まぁな。でもお前を一人にはできないだろ。」
表情一つ変えずにそう言う天根君に、私が恥ずかしくなった。
神社に来るまでは弟と一緒だったのだけど、弟も神社で友達を見つけたらしくそっちに行ってしまったのだ。
それを天根君に説明すると、急にごそごそとコートのポケットをあさる。取り出したのは携帯電話。
「そういう時は俺に連絡しろ。すぐに行く。」
「・・・でも、天根君の番号もアドレスも知らないよ。」
「だから出した。」
「・・・・・・・。」
・・・・・・新年そうそう会えた上に、ここでアドレスも交換できるなんて・・・・。もしかしたら今日で今年の運全部使ったような気がする。
私も鞄にしまった携帯を取り出すと、お互いのアドレスを交換し合った。
確認のためにとアドレス帳を開けば、一番目に“天根ヒカル”の名前が。
どうしよう、ちょっと口がにやけそうだ・・・。
「・・・よし、俺も登録完了だ。」
「うん。じゃぁ、初詣でに行こうか。」
「うぃ。」
私がそう言うと天根君は携帯をポケットに戻した。そして、空いた右手を私の前に差し出す。
「お手を拝借。」
「え?」
「手、繋がないとさっきみたいに転ぶぞ。」
「おっ、お手を拝借はちょっと違う気がする。」
「それに、ここではぐれても困るだろ?」
「大丈夫だよ、天根君背高いし。」
「・・・・俺がダメ。」
天根君はそう言うと、しびれを切らしたかのように私の手を取った、とたんに私の心臓が音を立てて動き出す。
少しうつむくと、大きな手が私の手をすっぽり包んでいた。
「・・・・天根君。」
「ん?」
「手、冷たいね。」
「・・・・・手袋亮さんに取られた。」
「えっと・・・・木更津先輩に?」
「そう。お前の手は・・・・。」
「ん?」
「・・・・・温かいな。」
そう言った彼が私と同じ顔をしていて、手も心も温かくなった。
でもこうやって二人で赤くなってても、この人ごみの中じゃきっと気づかれずにすみそうだなんて思いながら歩き出す。
今年もいい年になりますように。
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