雨が降ってきた。せっかく久しぶりに日吉君とデート(本人に言ったら嫌がられる)なのに。
勿論私は傘を持っていない。空を見上げていたら、日吉君が鞄から折りたたみの傘を取り出した。



「日吉君、傘持ってたんだ。」

「当たり前だ。お前の事だから、どうせ持ってないんだろ。」

「うん。だからそこのコンビニで買ってくるね。」



私が近くのコンビニを指差して行こうとすると、日吉君に手首を掴まれた。



「必要ないだろ。」

「え、だって傘・・・。」

「俺のがあるだろ。」



日吉君は時々真顔で凄い事言うよね、うん。
折りたたみの傘が開く。紺色の綺麗な傘だ。



「それとも、俺と相合い傘するのが嫌か?」

「いや、それはないけど・・・・。」

「ならいいだろ。さっさとしろ、置いてくぞ。」



日吉君はそう言うと傘を差して雨の中に足を踏み入れた。
私が渋々日吉君の隣に行くと、彼は私を見て眉間にしわを寄せた。



「お前、それじゃ意味ないだろ。」

「え?」

「・・・はぁ。」



日吉君はそう言ってため息をつくと、私の肩に手を回した。一気に距離が近くなる。



「ひ、日吉君!?」

「あいにくこの傘は小さいんでな。これぐらいしないと濡れるぞ。」

「・・・・。」



そう言ってニヤリと笑う日吉君に恥ずかしさが一気にこみ上げてきた。
傘の小さな空間にちょっと緊張する。



「結構降ってるな。」

「そ、そうだね・・・・。」

「・・・・お前。」

「な、何?」

「何でもない。」



そう言ってそっぽを向いた日吉君の顔が少し赤いと思うのは自惚れなのかな?
私は日吉君の肩に自分の肩をくっつけた。お互いちょっとだけ肩が傘から出てるけど、気にならない。



「雨、止まないね。」


「そうだな。」



傘に落ちる雨の音を聞きながら、もう少し雨が降っててもいいと思った。



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