「なんじゃ赤也、元気ないのぉ。」

「そりゃあ好きな子が別の男にチョコ渡してるの見れば、ショックだろぃ。」

「2人とも、笑いすぎですよ。」



そんな先輩達の笑い声を聞きながら思いっきり部室のドアを閉めた。
くっそ、イライラする。それもこれもあいつのせいだ。
今日はバレンタイン。朝っぱらから雪が真田副部長にチョコを渡しているのを目撃。しかも副部長も断るかと思いきや、受け取っていた。
それを見て眠気が吹き飛んだ。というか眠気よりもモヤモヤとした気持ちがこみ上げてきた。
そのせいで今日は1日あいつを無視した。悪気はないけど口を開いたら何言うか自分でも分からないから。それでもイライラは増してって、放課後になっても消えやしねぇ。ラケットを担ぐとため息をついた。



「本当に、あいつ馬鹿じゃねぇの。」

「馬鹿はお前だ切原。」



声がした方を見れば紙袋を持った雪がいた。仁王立ちでこっちを睨みつけている。
その後ろで面白そうに微笑む部長とノートを取る柳先輩。絶対面白がってる、あの二人・・・・・。



「勉強できない馬鹿ってのは知ってたけど、まさか人の心も労われない馬鹿だったなんて知らなかったよ。」

「はぁ?喧嘩売るだけに来たのかよお前。」

「違うし。みなさんにバレンタインのチョコ持ってきたんだよ。」



俺より自分が一番人の心も労われてないのは絶対にお前だ、お前!!
それにバレンタインチョコって言ったって、どうせ去年みたいに“みなさん”もしくは副部長の余りものを貰うんだ。あー、ますますイライラしてきた・・・。



「・・・・・・・。」

「何だよ。」

「切原、なんか今日私の事避けてるでしょ?」

「・・・別に避けてねぇよ。」

「いいや、避けてるね。しかも怒ってるし。」

「怒ってねぇよ。」

「怒ってる。」

「怒ってねぇ。」

「じゃぁ避けてるのは認める?」

「・・・・・・渡し終わったならさっさと帰れよ、練習の邪魔。」




俺はそう言うと雪に背を向けた。
正直イライラしてるし、避けてもいる。その原因が嫉妬だなんて、なんかカッコ悪ぃじゃん。



「切原!!!」



また雪に名前を呼ばれてとっさに振り向けば、頭に何かが当った。ポトっと俺の頭から落ちた何かは小さな箱だった。赤いリボンのついた薄い茶色の箱だった。



「バーーーーーカ!」



雪は俺に向かってそう叫ぶと、くるりと回って走って行ってしまった。小さい箱を拾って中を開けば、その中にはチョコが。気づかなかったけどリボンにはハートの紙にバレンタインと書かれている。そこで俺はようやく雪がこの箱を俺に投げたのだと分かった。



「今のは赤也が悪いかな。」

「そうだな。」



それを見ていた先輩達がやっぱり面白そうにそう言った。
幸村部長はいつものように笑うと俺の持っていたラケットを奪った。



「な、何するんすか!!」

「赤也、外周走っておいで。」

「はぁ!?何で俺が・・・。」

「走って行けば、雪に追いつくんじゃないか。」



俺は先輩のその言葉にはっとすると、持っていたチョコの箱を閉めてポケットにしまった。
そして2、3回屈伸すると、雪の姿を追って走り出す。後ろで先輩たちの声援が聞こえるけどとりあえず無視。あいつに追いつくまでに言い訳考えなきゃなんないんだから許される範囲っしょ。


2013VD's.


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -