左にある大きな紙袋の中には溢れんばかりのプレゼントの山が見える。
それを持っていたヒカル君が何時もよりも嬉しそうなのは今日が11月22日だからだろう。



「今年もいっぱいだね。」

「プレゼントいっぱい貰って、いっぱいいっぱい・・・・ぷっ。」

「いっぱいいっぱいなの?」

「ダジャレを素で返すな。」



ヒカル君は小さくそう言うと私のおでこにデコピンをした。
おでこを押さえながら見上げれば、今度は嬉しそうに頭を撫でられた。
今日は11月22日。ヒカル君の誕生日である。
男子テニス部のみなさんによる誕生日会が終わってから、ヒカル君と私は砂浜に腰を下ろしていた。薄暗い砂浜に波の音だけが聞こえてくる。



「お誕生日おめでとう。」

「ありがとう。雪も参加すればよかったのに。」

「私はテニス部じゃないから。」

「気にする事ない。」

「えっと、マフラーさっそく付けてくれてありがとう。」

「あぁ、これ暖かい。気に入った。」



ヒカル君はそう言うと首に巻かれたマフラーに触れた。私がさっきプレゼントしたものだ。彼の髪に似た茶色のマフラー。手作りではないけれど、喜んでくれたみたいだった。



「今年はちゃんと自分で考えて選んだんだよ。」

「・・・・・・。」



私がそう言うとヒカル君は何も言わずにマフラーに顔を埋めた。
そんな横顔を見ながら、私もマフラーに顔を埋める。吐く息が白く舞って、二人で同じような恰好になっていて、ほぼ二人同時に噴出した。



「寒いね。」

「寒いな。」



日が落ちるのが早くなった。その分一緒に帰る時間も短くなっているような錯覚になる。ちらりとヒカル君を見れば、お互い目があう。
薄暗い中でもはっきりとヒカル君が分かった。不思議なぐらい。私はそんな薄闇の中でヒカル君の右手を探す。ようやく見つけた右手の人差し指を握れば、ヒカル君の顔がマフラーの中から顔を出した。



「何?」

「うん、誕生日、おめでとう。」

「・・・・・ありがとう。」



もう一度その言葉を言うと今度はヒカル君が私の手をすっぽりと覆った。大きくて暖かい手のひらに、なんだかすごく安心してしまった。
・・・・やっぱり好きだなぁ。恥ずかしくて口では絶対言えないけど。



「・・・・寒いか?」

「・・・・うん。」



ヒカル君の問いに頷くと、二人の間の距離がなくなった。ヒカル君はあっと言う間に近づいて私の肩に頭をもたれた。
手のぬくもりと右肩の重さに驚きながらも、やっぱり安心してしまう。



「送ってく。」

「え?」

「だから、もう少し・・・いい?」



ヒカル君のその聞き方はなんというか・・・・ずるい。返事の代わりに握っている手の力を強めると、ヒカル君がやっぱり嬉しそうに笑っていた。

2012 Birthday.


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