国光君からなんと男子テニス部でハロウィンをやるという情報をゲットしました。
これは、海堂先輩にバンダナを返すチャンス・・・・・。
そこで私はクッキーを焼いて包装し、その中に洗ってアイロンもちゃんとかけたあのバンダナを一緒に入れた。
これを同じクラスで隣の席の男テニレギュラーの越前君に託して海堂先輩に渡してもらえばいいんだ、我ながらナイスアイディア!!
「やだ。」
しかし予想もしなかった越前君のその言葉に、急に暗雲が立ち込めはじめた。
「何で?渡してもらうだけでいいんだけど!!」
「それがやだって事。あんたもしつこいね。」
越前君はそう言うと鞄を肩に背負うと、眉間に皺を寄せた。
「だって、部活でハロウィンやるんでしょ?」
「らしいね。」
「らしいね、って・・・・越前君も参加するんでしょ?」
「・・・・・・・・。」
「え、サボり?」
「人聞きの悪い事言わないでくれる?」
そう言って一層私を睨みつけている越前君は怖い。しかし、しかし私だってここは引くわけにはいかないんだよ!!!
「じゃぁ、行くんでしょ?」
「行くとは言ってない。」
「じゃぁサボ、」
「練習やらないなら部活休むだけ。」
「えー、参加しないの?お菓子貰えるよ?」
「興味ない。」
・・・・越前君は今日もクールです。
彼は私の手に握られているバンダナ入りのお菓子の袋を見ると、ため息をついた。
「俺に頼むより、直接渡せばいいじゃん。」
「それができないから越前君にお願いしてるんだよ。」
「努力ぐらいしなよ。」
「・・・・・・お願い、越前君!渡すだけでいいから!!」
「だから、」
「おーい、越前!」
そのお菓子を無理やりにでも越前君に押し付けたその時、教室に威勢のいい声が響いた。
声がした方を見れば、男テニのレギュラージャージを着た人が立っている。あの人は確か、2年生の桃城先輩だ。
桃城先輩は教室に入り、越前君と私に近づく。
「げ、桃先輩・・・・。」
「やっぱりお前帰ろうとしてただろ?英二先輩と話してた通りだぜ。」
「自由参加って聞いたんスけど?」
「レギュラーは全員参加に決まってんだろ。」
「・・・・・・。」
「折角のハロウィンなんだから。それにお前、もうお菓子貰ってんじゃねーかよ。」
「これは・・・・。」
「あ、こいつの手作りか?隅に置けねぇーな、お前も。」
「これは俺にじゃないっすよ。」
やってきた桃城先輩に頭を下げると、いかにも嫌そうな顔で越前君が私を指差した。
「こいつからっす。海堂先輩に。」
「海堂に?」
「いや、あの、えっと・・・・。」
「こいつ、海堂先輩のストーカーだから。」
「ストーカーじゃない!ファン!ファンです!!」
必死に否定する私を見て桃城先輩は面白そうに声を上げて笑った。
そして越前君の手からお菓子の袋を取り上げると、私の作ったクッキーを眺める。
「へー、海堂のファンか。世の中物好きな奴もいるもんだな。」
「あ、桃先輩。それ海堂先輩に渡しといてくれないっすか?」
「ちょっと、越前君!!」
「別にいいぜ。」
「えぇ!?」
願ったり叶ったりで、あっという間に目的達成。やったね!!!
桃城先輩に改めて頭を下げると、笑顔で「じゃぁな。」と言い越前君を引き連れて教室を去って行った。
「・・・あ。」
そんな二人を見送りながら、お菓子の袋にメモでもつければよかったと今更に後悔した。
\Halloween!/
「おい、マムシ。」
「・・・・あぁ?」
「お前のファンから、お前にハロウィンのお菓子だってよ。」
「ストーカーっすよ。」
「まぁ、どっちでもいいだろ。ほらよ。」
「・・・桃城。」
「何だよ。」
「俺に、とか言っときながら何でてめぇがクッキー食ってんだ。」
「いいだろちょっとぐらい。」
「いいわけねーだろ!」
「あぁ、やんのかこら!!」
「お前たち、喧嘩はやめろ!」
「・・・結構いけるじゃん、このクッキー。」
2012/10/31