11月22日。今日は天根君のお誕生日。
朝。隣のB組に行くなり、天根君にぷいっとそっぽを向かれた。
お昼。中庭にいた天根君の背中に声をかければ、そのまま足早に行ってしまった。
放課後。HRが終わってすぐにまたB組に向かうも、天根君はもう部活に向かったと星野さんに告げられる。
あれ?あれれ??
「やぁ、いらっしゃい。」
そして夕方。私は意を決して男子テニス部の部室に向かうと、部室から佐伯先輩が出てきた所だった。
いつものように爽やかな笑みを浮かべて私にそう言った。
私は急いで頭を下げる。
「こっ、こんにちは。」
「もしかしてダビデ?」
「はい。いますか?」
「あぁ、中にいるよ。」
佐伯先輩はそう言うと部室のドアを開ける。そして私は先輩に入るように促されて部室に足を踏み入れた。
部室に残っていたレギュラー陣の視線が一気に私に集まる。
「ダビデ、お客さん。」
「おっ、お邪魔します・・・・。」
「あっ、こんにちは!」
「よぉ、久しぶりだな。」
「いらっしゃいなのねー。」
「クスクス、この子が噂の・・・。」
「・・・・・・・。」
皆さんがそれぞれ口を開くと、部室の一番奥にいた天根君が少し驚いたような表情で私を見ていた。そして何かを慌てて後ろに隠す。
そんな彼をよそに、黒羽先輩と髪の長いえっと・・・・木更津先輩が私の元にやってきた。
「クスクスクス、いいところに来たね。」
「え?」
「あいつ、拗ねてんだよ。」
「ちょっ、バネさん!」
「君に誕生日忘れられてるんじゃないか、ってしょんぼりしてたのねー。」
「そうそう。それに昨日クラスの人と買い物に行ったのなんか見ちゃったから尚更らしくて・・・。」
「はいはい、みんなそれぐらいにして。」
佐伯先輩はそう言うと、私に向かってごめんねと小声で謝った。
「まぁ、何もないけどごゆっくり。」
「邪魔者は消えるのねー。」
「えぇ!まだ話したい事があるのに!」
「ほら、行くぞ剣太郎。戸締りよろしく。」
「ダビデ。ちゃんと彼女送ってやれよ!」
「・・・・・・・うぃ。」
そう言い残すと、レギュラー陣は風のように部室から去って行った。
残ったのは天根君と、私だけ。
天根君は私から視線を外すと、近くにあった椅子を引いた。
「座れよ。」
「うっ、うん・・・・。」
私はその椅子に座ると、天根君もその近くの椅子に座った。
黒羽先輩が去り際に言った言葉が気になる。拗ねてる?もしかして、天根君が?
私はそう思って天根君の方を見れば、すぐに視線を外された。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・昨日の放課後、東堂と一緒に駅前にいただろ?」
「みっ、見てたの?」
「・・・・・楽しそうに話しこんでた。」
「・・・・・・・。」
私は息を吐くと、そのまま持っていた紙袋を天根君に渡した。
急に渡された天根君は紙袋を見てきょとんとしている。
「これ、買ったの。誕生日のプレゼント。」
「え?」
「東堂君に相談にのってもらったの。それのために。」
「・・・・・・・・。」
そう、前日まで悩んだ挙句、偶然部活帰りだという東堂君に遭遇。そしてプレゼントの相談にのってもらったのだった。
・・・・天根君がその事です拗ねていたのかな?
「天根、君。」
「・・・・・何?」
「お誕生日、おめでとう。」
「・・・・ありがとう。」
そう言った私とようやく天根君は視線を合わせてくれた。天根君がごそごそと私からのプレゼントのリボンを嬉しそうに解いている後ろに見えるプレゼントが入った紙袋は見なかった事にしよう。
だって、私の事で拗ねてくれていた方が何倍も嬉しかったのだから。
「追加のプレゼント、いいか?」
「追加?」
「・・・・一緒に帰らないか?」
「・・・・・・喜んで。」
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ダビデハピバ!!
拗ねちゃうダビデ、可愛くないか!
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