学校の桜を見上げながら歩いていたら、誰かとぶつかった。尻餅をついた私にキラキラ光る銀色が見えた。
「ごめんなさい、大丈夫でしたか?」
「はっ、はい・・・・・。」
見れば小等部の制服を着たふわふわの髪の男の子だった。銀色に見えたのはこの子の髪か。
私が立ち上がると頭一つ下の頭がさらに下がった。
「怪我はないですか?」
「うん、大丈夫。君は?」
「俺も大丈夫です。」
そう言って笑った顔は凄く可愛かった。
それから数ヶ月。
「宍戸。」
「あ?何だよ、お前か。」
同じクラスの宍戸に声をかけると私を見ながら机に肘を付いた。
高く縛った髪は相変わらずさらさらだ。
「やさぐれてるねー。」
「うるせー。実力は認めるが、なんか気に入らねぇんだよ。」
きっと跡部君の事だろう。入学式当初からいろいろあったが、その中でも一年生であのテニス部の部長にまでなった実力となんというか・・・・・カリスマ?
それから一年たった今でも、どうやらそれは変わっていないみたいだ。
「まぁ、私達も先輩になったんだしさ。」
「まぁな。」
「どう、期待の新人は入ってきた?」
「あぁ、すげーサーブ打つ奴がな。」
「へー。」
生返事の私を宍戸は一瞬睨んだが、しばらくして少し目を細めた。
「もしかしたら・・・・・上がってくるかもな。」
「どんな子なの?」
「聞いてどうすんだよ。」
「だって宍戸がそこまで言うんだもん。気になるじゃん。」
「・・・・なんかこう・・・・犬みてーなふわふわした髪の奴だ。」
「あっ、もしかしてあの子かな?」
「何だ、知り合いか?」
「ううん。でもふわふわの髪で優しい小さい男の子だよね。」
「・・・・・・・。」
きっといつかに会ったあの男の子だ。へー、テニス部に入ったんだぁ。
そんな事を考えいたら、また宍戸に睨まれた。
「えっ、何?」
「・・・多分お前が知ってる奴とは別人だ。」
そしてそれから数日後。
なんとなーくテニスコートを覗いてみたら宍戸がいた。私に気づいた宍戸は私の方にやってきた。
「部活お疲れ様。」
「お前は帰りか?」
「そんな所。」
「宍戸さん!」
宍戸の後ろから見知らぬ声が聞こえてきた。誰かが手を降りながらこっちにやってくる。
「おい、瀬名。あいつだ、サーブのすげー一年。」
「あー、噂の。」
そう言って近づいてくる人影を見つめる。
ふわふわの髪に優しそうな瞳・・・・・・・あれ?これは、やっぱりあの時の、男の子?いや、でも・・・・・。
「宍戸さん、忍足さんが呼んで・・・あっ。」
男の子はそう言いながら私に視線を移すと男の子はあの時みたいに大きな目をして私を見つめた。
「いやぁ、まさか本当にあの時の男の子だとは思わなかったんだよ。」
「まぁ、かなり身長も伸びてましたからね。」
「うん、宍戸より背高かった。今もだけど。」
「・・・・俺、小等部から雪さんの事好きでしたよ。」
「えっ、そうだったの?」
「はい。だから何度もすれ違ったり、今みたいにここの桜の下で待ってみたり。」
「・・・・桜綺麗だね。」
「雪さんも負けてないですよ。」
「いや、そこは・・・・・・負けてもいいです。」
「そうですか?」
「うん。」
「・・・・もう少しお花見しましょうか?」
「・・・・そうしましょう。」
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