忘れ物を取りに教室に行ったら見知らぬ女子がいた。
俺に気づいたのかそいつは振り返る。
「忘れ物?」
「・・・・・お前、誰?」
「人に名前を聞く時はまず自分から、って習わなかった?」
・・・・・何だこいつ?何で知らねー奴にそんな事言われなきゃならねーんだよ。
そんな事を考えていたら、そう言った女子が声を上げて笑った。
それになんかイラついた。
「ごめんごめん冗談だよ、切原赤也くん。」
「俺の名前知ってるんじゃねーかよ。」
「そりゃ、有名人だからね。」
そう言って笑ったそいつの姿にドキっとした。
何でだ?
「へー、俺ってそんなに有名な訳?まっ、『立海のエース』だからな!」
「『あの男テニの3強に挑んだ無謀な1年生』って噂。」
「・・・・・・・。」
「まぁ、私も友達から聞いたから確かではないけどね。」
俺は舌打ちをすると自分の席の中からノートを取り出した。そして頭をかくと、距離が少し近くなったそいつを睨みつける。
「で?」
「ん?」
「俺は名乗っただろ?あんたの名前は?」
「少女A。」
「はぁ?」
「微妙だった?じゃぁ通行人B。」
「何だそれ。」
「怒らないでよ、ごく普通の生徒って事。それから、同じ学年だよ。」
・・・・そんな事言う奴はごく普通の生徒って言わねぇよ。
呆れてため息を付くと、ノートを肩に担いだ。
そいつはそんな俺に近づく。
「部活終わり?」
「そうだよ。」
「大変だね。」
「ふんっ、ありきたりな台詞だな。」
「ごく普通の生徒ですから。」
そいつはそう言って笑うと、突然俺に手を伸ばしてきた。驚く俺をよそにこいつは俺のネクタイに触れる。気づいたら俺のネクタイは不恰好に曲がっていた。
「『立海のエース』も、ネクタイもちゃんと締めれない1年生なんだね。」
さっきよりも近いその姿にさっきよりもドキドキと心臓が鳴りだした。
はぁ?何で??
「これでよし。」
見ればネクタイは綺麗に直されており、こいつはそう言うと俺の胸をぽんと叩いた。
持っていたノートが俺の手から落ちる。
それを見たそいつはそのノートを拾うとまた笑って、俺に差し出した。
「はい、落ちたよ。」
「・・・・・あ、ありがと。」
「じゃぁ、もう一言だけありきたりな台詞言おうかな。」
「何だよ。」
「部活、頑張ってね。」
「あはははははははははっ!」
「ちょっ、部長!何で笑ってるんすか!?」
「だって赤也、それで、彼女の事、好きになっちゃったんでしょ?」
「そ、そうっすよ!悪いっすか!?」
「なるほど、それで2年になって同じクラスになり、瀬名さんを知った・・・という事ですか。」
「あはははははははっ!!面白すぎ・・・・・。」
「幸村君、あなたから聞いておいて笑いすぎですよ。」
「そっ、そうっすよ!部長が無理やりこの話させたんじゃないっすか!!」
「だって気になったから。」
「・・・・・・あーもー、俺は言いましたからね。これで俺は帰るっす!」
「あー、ごめんごめん赤也。雪ちゃんと、の事柳生と一緒に、応援してるから、ね?・・・あははは。」
「・・・そうですね、できることがあれば力になりましょう。」
「・・・・・・柳生先輩はともかく、部長まったく説得力ないんすけど。」
+++++++
なれそめなれそめー。
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