長太郎君が私の姿を見るなり駆け寄ってきた。
彼は眉を下げると、私の手を握る。



「瀬名先輩・・・。」



その声は寂しそうで、今にも泣きだしそうな声だった。
いつもとは違う長太郎君に困惑していると、いよいよ目じりに涙を浮かべ始めた。



「ちょっ、長太郎君・・・・。」



そう言って手を引いた長太郎君は私を抱きしめた。苦しいぐらいに抱きしめられて心臓が飛び出しそうだ。
しかし私の耳元で涙を堪える長太郎君の嗚咽を聞いたらなんだか私が泣かせているみたいな気分になった。
見上げてみれば、彼の整った顔が意外と近くにあって驚く。彼は必死に涙を堪えている瞳を私に向ける。



「俺、貴女と離れたくない・・・。」



長太郎君はそう囁くように言うと、私の頭を後ろに手を添えてまた私を抱きしめた。
・・・・私だって離れたくなよ。そう言えない私は言葉の代わりに彼の大きな背中に腕を回した。長太郎君の温かさとか匂いに包まれて、なんだかくらくらする。
私の髪に顔をうずめる彼も、同じだといいと思った。
そんな事をぼんやりと考えていたらなんだか急にものすごく恥ずかしくなってきた。私は長太郎君から少し体を離す。



「あっ、じゃぁ、こうしよう!」

「え?」



突然言われて長太郎君の目が丸くなった。私はポケットからケータイを取り出すとそこについているストラップを一つ取った。



「はい。」

「これは?」

「私のストラップ。これ持ってれば、その・・・・寂しくないでしょ?」

「・・・・・・・・。」



長太郎君の手のひらの上にそれを乗せる。私が好きなキャラクターの小さいぬいぐるみが付いたストラップだ。しばらくすると長太郎君は嬉しそうにそれを包んだ。そしてそれを自分のケータイに付ける。長太郎君はケータイのストラップもシンプルなものを付けていたから、私のストラップはなんだかへんてこだった。
それでもようやくいつものように嬉しそうに笑ってくれた。



「嬉しいです、すごく。」

「よかった・・・・。」

「じゃぁ、俺も。」



彼はそう言っていつもつけているクロスのネックレスを取った。そしてそれを私の首に付けた。そしてまた私を抱きしめる。



「長太郎君、これ・・・・。」

「俺も、それ瀬名先輩に渡しておきます。」

「えっ、でもこれ大切なものなんじゃないの?」

「先輩のストラップだって気に入ってたものでしょ?」

「そう、だけど・・・・。」

「なら、これでお相子です。お互いに。」



そう言ってまた私の頭の後ろに手を添えた。私は下げられたクロスを握りしめると、長太郎君の方に顔を押し付けた。



「雪・・・先輩、好きです。」



耳元でそう言った長太郎君の声に、今度は私が泣きそうになった。





「ってあいつはあんな事言ってますけど、たかが校外学習で2日会えないだけですよ。」

「どっちも激ダサだな。」





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