「放課後、校門で待ってろ。」

「え?」

「5時半に校門だ。いいな?」




委員会の当番を交換した私を知ってか、HRが終わるとすぐに日吉君がそう言った。
私の返事も聞かずにそう言った日吉君はそのまま部活へと行ってしまった。
そして私は委員会の仕事を終えて、日吉君の言葉通り校門の前に一人たたずんでいた。
冬に一歩足を入れた空は5時半の時点で既に真っ暗で、近くの街灯が私の足元を照らしている。
吐く息は白く、今日引っ張り出してきたばかりのコートに感謝した。迷ったけど、着てきてよかった。
手に息を吹きかけると、日吉君の姿が見えた。




「日吉君。」

「待ったか?」

「ううん。」



日吉君はマフラーに手袋で、コートは着ていなかった。部活終わりだし、鍛えてるから寒くないのかな・・・・。
そんな事を考えながらお互いに歩き出す。



「そんなに待ってないよ。」

「そんなにって事は、待ったんだな。」

「・・・・はい。」



日吉君はそう言った私のおでこにでこぴんをした。そしておでこをさする私を見て、楽しそうに笑う。



「お前、今日委員の当番じゃないだろ。」

「えっ、うん。」

「何で代わったんだ?」

「それは、今日当番の子が急用ができたから代ってって・・。・・・・そもそも、何でそれを日吉君が知ってるの?」

「その交代したって奴と部活に向かう途中すれ違ったからな。彼氏と仲良く帰ってたぞ。」

「・・・・・・・。」

「お前も相当お人好しだな。」



日吉君はそう言うと今度は私の頭をぽんぽんと撫でた。
彼氏と喧嘩して仲直りしたいって言われたら・・・・・協力しちゃうでしょう?でも仲直りできたみたいだ、よかった・・・。



「・・・くしゅんっ。」



日吉君の手が頭から離れると、くしゃみが一つ出た。急いでコートの襟に首をすくめる。



「寒いのか?」

「さっ、寒いよ。うん。」



私がそう言うと同時に、北風が二人の間を通り過ぎて行った。うぅ、コート着てても寒い。
身をちぢこめている私の横で日吉君がため息を付きながら左手の手袋を外した。



「日吉君は寒くないの?」
「寒い。」

「じゃぁ何で手袋片方取っちゃったの?」

「・・・・・・・。」



日吉君はそう言った私の顔を見つめると、私の手にその取った手袋を差し出した。



「・・・・これは?」

「使え。」

「いいの?」

「右手は貸さないからな。」

「あっ、ありがとう・・・・。」



私はお言葉に甘える事にした。左手にその手袋をはめてみた。中はぽかぽかと暖かくて、少し大きかった。



「ありがとう日吉君、暖かいよ。」

「そうか、俺は寒い。」

「えっ、えぇ!?」

「だからお前の右手貸せ。」



日吉君はそう言うと左手で私の右手を握った。驚く私をよそにに日吉君は平然とそのまま歩いている。
手袋を貸してもらった左手よりも、繋いだ右手の方が暖かかった。



「・・・・・マフラーは貸さないからな。」

「・・・うん。」



こっそりと日吉君の横顔を見れば、少し赤くなっている。きっと私も彼と同じような顔をしているに違いない。
・・・・日吉君だってお人好しだ。私に手袋まで貸してくれて、おまけに手まで繋いでくれるんだから。




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あれ、これ、日吉、ですかね?(爆)



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