今年も学園祭の季節がやってきた。
私のクラスと委員会は展示物なので、当日特に何もする事はなかった。
なので、ぶらぶらと校内を探索。
パンフレットを見ながら校内の賑やかな雰囲気に今年の学園祭も大成功だなと思う。
そして私はパンフレットのある部分に目をひいた。
それは日吉君も所属しているテニス部。
今年はクラスも委員会も特にないから部活の方に出る、とため息交じりに話していたのを思い出した。



「行ってみようかな・・・。」



結局今日の当日まで具体的にどんな喫茶店なのか日吉君から聞き出すことができなかったのだ。
私はそう決意すると、改めて持っていたパンフレットと向きなおす。えっと、今大体この辺りだから・・・・・。



「おい。」

「ひゃぁ!?」



突然聞こえてきたその声に驚き、思わずパンフレットが落ちた。それを拾ってくれる手に見覚えがあったが、視線を上に向けるとなお驚いた。
だってそこには魔女がいたのだから。



「・・・・・・・・。」

「このまま行ったら階段だ。お前、本当にお約束な奴だな。」「・・・・・ひ、日吉君?」



正確には、魔女の恰好をした日吉君だった。
黒いマントに大きな帽子。ご丁寧に星のステッキまである。



「ほら、これ。」

「あっ、ありがとう・・・・・・。」

「・・・・・・・あんまり見るな。」



日吉君はそう言うと心底嫌そうな顔をした。私がパンフレットを受け取ると、日吉君は持っていた籠から小さなプリントを私に渡した。



「えっと、お仕事はビラ配り?」

「まぁ、そんな所だ。」

「・・・仮装喫茶?」

「これが部の出し物だ。1年は雑用。2年はハロウィン。3年は女装だ。」

「じょっ、女装!?」

「あぁ、跡部さんはノリノリだった。」



なんとなく想像できてしまうのは、それはあの跡部先輩だからだろう・・・・。
なるほど、だから魔女日吉君なのか。きっと仮装喫茶はお客さんであふれかえってるに違いない。



「鳳君と樺地君は何やってるの?」

「・・・・鳳は狼男、樺地はフランケンだ。」

「あぁ、似合ってるんだろうなー二人とも。」

「・・・・・・・・・。」

「日吉君?」

「・・・トリックオアトリート。」



日吉君じゃ少し眉間に皺を寄せながらそう言った。
私はその言葉に少し驚く。



「・・・日吉君も言うんだね。」

「ハロウィンだからな。」

「えっと・・・・・。」

「別にいいぞ、悪戯でも。」

「ちょっ、ちょっと待った!」



にやりと笑った日吉君の笑みを見ながら私は私は必死に制服のポケットを漁った。
偶然にも友達から貰った飴が入っていた。



「どっ、どうぞ・・・・。」

「・・・どうも。」



日吉君の手のひらにそれを乗せると、日吉君はそれを籠には入れずズボンのポケットにしまった。
そして籠の中から小さな包みを私の手の上に置いた。ピンクのその包みにはオレンジのリボンが巻かれている。



「・・・くれるの?」

「あぁ、俺だけ貰うのも不公平だろ。」



彼はそう言うと星のステッキを小さくくるくると回すと、リボンが魔法のように解けた。
緩んだ包みの中には小さなこんぺいとうがあった。



「わぁーすごい、日吉君。本物の魔女みたい。」

「魔女じゃなくて、魔法使いだろ。」



そう言って笑った魔女は星屑を私の口に数個放り込んだ。



2011's Halloween!






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