コトリ。
小さい音が聞こえて本から顔を上げると、そこには私の好きでいつも飲んでいるジュースの紙パックがあった。
紙パックの上にには手が置かれていて、私は手からそって視線を上に上げていく。と、そこにはあの日吉君がいた。
「どっ、どうしたの?」
「本の貸し借り以外にないだろ。」
「そっ、そうだね・・・・。」
「・・・と、いいたい所だが今日は別件だ。」
日吉君はそう言うと紙パックから手を離した。私は紙パックに手を伸ばすと、日吉君が持っていた本で私の頭を軽く叩いた。
「確かにそれはお前にと思って用意したものだが、俺の用が終わるまではお預けだ。」
「用事?」
「あぁ、ちょっとこっち来い。」
日吉君がそう言って本を置くと、紙パックを持って窓際の席まで移動した。カウンターの中にいた私は彼の言う通りに行くと、席に座るように促された。彼も私の前に座る。
「で、用事っていうのは?あっ、もしかして委員会の用事?それとも部活?」
「部活?」
私がそう言うと日吉君はあからさまに不機嫌そうな顔をした。
「なんで俺が部活の用で図書室に来なきゃならないんだ。」
「ごっ、ごめん・・・・。」
「・・・まぁ、いい。お前のいう事も間違ってはいない。委員会の用だ。」
まぁ、考えてみても日吉君の言う通りだった。だって彼、今制服だし。
日吉 若君。テニス部の次期部長候補。斜め前の席だけど今まで大してまともに話したこともない。ちなみに・・・私の好きな人でもある。
日吉君はそう言うと制服の胸ポケットから小さいメモ帳とペンを取り出した。
「まぁ、用は取材だ。」
「しゅ、取材?」
「あぁ。」
「学校新聞の?」
「まぁ、そんな所だ。お前は今から言う俺の質問に答えろ。」
「はっ、はい・・・。」
日吉君は軽く頷くと、メモ帳をペラペラと捲った。
静まり返った図書室に早くなった私の心臓の音だけが響いていそうな気分だ。
「最近ここからUFOを見た奴がいるらしい。」
「・・・・え?」
「UFO。正確に言えば、未確認飛行物体だ。お前も聞いた事あるだろ?」
「うっ、うん。UFOは聞いた事あるけど・・・・・。」
「俺の取材によれば、5〜6人は見たらしい。」
「そっ、そんなに?」
「そこでだ。」
「え?」
日吉君が持っていたペンでノートに○を書くと、そのペンを私の方に向けてきた。
「お前委員でけっこうこの部屋に居る事多いよな?」
「まっ、まぁいると思うけど・・・・。」
「だからお前にも聞いておこうと思ってな。お前、UFO見たことあるか?」
「・・・・・・・。」
日吉君の質問にぽかんと間抜けに口を明けると、彼の眉間に皺がよった。
「何アホな面してんだ。あるのか?」
「えっと、・・・・ないです。」
「隠しても何のためにもならないぞ。」
「見たことを黙ってても本当に何のためにもならないから。」
「・・・・・ちっ。」
日吉君は舌打ちをして顔を私から背けてからメモ帳に大きく×しるしをつけると、それをペンと一緒に机の上に置いた。
そして机に肘を付くと窓の外を見つめた。
ガラスに映る顔が、さっきよりも不機嫌な顔になっていた。「ごっ、ごめんね・・・・。」
「別にいい。この記事は諦める。」
「えぇ!?」
「お前が驚く意味が分からない。」
「だっ、だって・・・・ほかの委員の人にも取材してみたら?」
私が日吉君にそう言うと、彼はまた少し顔を背けて何かつぶやいた。
そして視線だけ私を見ると、メモ帳とペンを胸ポケットに戻した。
「いや、いい。」
「えっ、でも・・・・。」
「他に聞きたい事があったんだ。」
「え?」
日吉君はそう言うと、私に向き直った。
そして私の顔をじっと見つめる。本当に、ただじっと。
「あっ、あの・・・・・・。」
「お前、」
「はっ、はい。」
「俺の事、好きだろ?」
「・・・・・・・・・・・・!!??」
ニヤリという言葉が一番しっくりとくる笑みを浮かべながら日吉君はそう言った。
私は思わず座っていたイスからずり落ちた。そりゃもう見事に。心臓の音がバクバクと耳まで響いている。
そんな私を日吉君が手首を掴んで引き上げる。
「な、ななな、」
「さっきも言っただろ、今から言う俺の質問に答えろって。それじゃ取材にならないだろ。ちゃんと言葉で言え。」
「・・・・・・・・。」
日吉君はそう言うと面白そうに私を眺めている。私は顔から火が出るんじゃないかってほど、顔が熱い。
あぁ、願ってもない事なのに恥ずかしくて倒れそう。
「・・・すっ、好きです・・・・。」
私が小声でそう言うと、日吉君は満足そうな顔で私にさっきの紙パックのジュースを差し出してきた。
「お前、可愛いな。」
そう呟いてクツクツ笑う日吉君を横目に、私は紙パックのジュースの冷たさで火照った顔を冷やした。
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非似ですorz
そして無駄に長いっていうね・・・・。
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