数日後。
出勤前に階段を先に下りるあの黒髪ロングの美人さんを見かけた。しかも2人。一人は黒髪ロングにキャップを被りパーカー細身のジーンズ姿。もう一人は肩までの黒髪で灰色のアーガイルのカーディガンに黒いパンツ。しかも顔がそっくり。
肩までの髪の美人さんと目が合ったのでお辞儀をしたら綺麗に微笑まれた。そしてもう一人の美人さんに何かを耳打ちした。そんな二人は私とは反対の方に歩いて行ってしまったので私は止むなく二人に背を向けた。
どうやらお隣さんは黒髪美人の姉妹らしい。という事は昨日のセクシーイケメンはどっちかの彼氏さんだったのか・・・。


「って、電車遅れる!!」


私はスマホの時計を見ると駅までの道をダッシュした。



そんな仕事帰り。なんと駅ナカ限定で売っている話題のバターケーキ。まさか仕事帰りにまだ残っているなんて・・・。嬉しくて2個買ってしまった。
ほくほくしながらアパートの階段を上ると何かを発見。このアパートはワンフロワ2部屋で階段側に私の部屋が先にありその少し向こうにお隣さんの部屋がある。そんな私の部屋とお隣さんの部屋の丁度中間辺の壁を背にして・・・人がうずくまっていた。膝に肘を乗せてその腕に顔をのせている。
え、引越してきたそうそう不審者!?かと思ったが何だかどこかで見たような人だった。濃いキャラメル色の髪が紺色のニット帽の下に見える。まさか・・・。


「あ、あの・・・。」


思わず声を掛けてしまった私にその人が顔を少し上げた。やっぱり・・・あのセクシーイケメン彼氏さんだ。
彼氏さんは私にゆっくりと視線だけを向けた。


「だ、大丈夫ですか?」

「・・・。」


無言。
もしかしてあの二人の黒髪美人さんのどっちかを待ってるのか?合鍵とかないの??と思ったが見ればちょっとぐったりしていて心なしか顔色が悪そうだ。


「もしかして、体調が悪い、とか?」

「・・・違う。」


喋った。と同時にぐーと大きな音がした。お腹の音だ。しかも彼氏さんの。
彼氏さんはまた腕に顔をのせる。


「・・・腹減った・・・。」




有り合わせで作ったチャーハンを綺麗にたいらげると彼氏さんは胸の前で手を合わせた。


「ごちそうさまでした。」

「お、お粗末様でした・・・。」


結局彼氏さんを支ながら我が家に上げると私はチャーハンを作った。(私が夕食にしようとしたやつだけど)よほどお腹が減っていたみたいだ。


「本当に助かった、ありがとう。」

「はぁ・・・。」

「暫く何も食ってなかったから。」

「ちなみにどれぐらい?」

「三日前にクッキーみたいなビスケットみたいなやつ食ったっきり。」


それって私が上げたガレットじゃ!?!?
平然を装いながら空いてるカップに紅茶を入れながら今更ながら上着を脱ぎ始めた彼氏さんを盗み見る。
ニット帽の下からはキャラメル色のウェーブがかった少し長めの髪が。彫りの深い顔立ちはもしかしたらハーフかもしれない。シンプルな黒のVネックのロングTシャツにジーンズ。本当に外見はイケメンだ。しかし、もしかしなくて黒髪美人さんのヒモ、なのか?
そう考えていると彼氏さんが机にあった白いケーキボックスを見つめていた。あのバターケーキが入っているものだった。私は紅茶を淹れたカップを彼氏さんの前に置くとケーキボックスを開けた。


「えっと・・・こっちも食べますか?」

「!?いいのか!?」


私がそう言うと彼氏さんの目がキラキラと輝いたように見えた。なんかこう、以外だ。私はバターケーキを前に置く。


「ホワイトチョコ?」

「バターケーキです。」

「バターケーキ・・・いただきます。」


付属のフォークの封を開けてバターケーキを切った。ひと口が大きい。頬張るなりまたキラキラと目を輝かせる。間違いない。


「バターケーキって初めて食べたが、成程、美味いな。」

「甘い物お好きなんですか?」

「あぁ。」


彼氏さんはそう言うと黙々とバターケーキを食べ続ける。一見したら甘い物苦手そうな雰囲気なのに。彼氏さんはカップに口を付けると私の方を見た。


「そうだ、名乗って無かったな。202号室の天根ヒカル。」

「秋野紅葉です・・・って、え?」


え??今何て言った!?


「あなたが、あまね、さん????」

「?そうだけど?」

「え、て、てっきり黒髪ロングの美人の彼女さんがお隣かと・・・。」

「黒髪ロング?もしかして良くん?まぁ確かに美人だけど彼女じゃない。というか男だし。」


男性!?さらに衝撃!?思わずバターケーキを落としそうになった。
彼氏さんもといお隣さんの天根さんは紅茶のカップを机に置いた。


「まぁ、よろしく。」


そう言うとまたバターケーキを美味しそうに頬張った。



 

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